質問
受益者連続信託を行った場合、遺留分はどうなりますか?
回答
受益者連続信託を使った場合に、遺留分請求を免れるかは判例がありません。
特に、当初受益者の相続の際は、遺留分は発生するものとして対策を考えておいた方が良いのではないでしょうか。
以下に少し説明していきます。
受益者連続信託は、信託法第91条を根拠に行うことができます。
(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)
第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。
そして、信託法第91条では、受益者の死亡により受益権が消滅して、他の者が新たな受益権を取得するとなっています。
受益権は相続により移動するのではなく、一度消滅して新たに受益権が発生するので、遺留分減殺請求の対象とならないという説もあります。
元々の受益者がもっていた受益権は死亡と同時に消滅しており、新たな受益者固有の財産として受益権を取得するという考え方です。
生命保険金の場合、生命保険金の請求権が被相続人から承継されるのではなく、生命保険受取人の固有の権利として取得するから相続財産にあたらないとされています。
最高裁平成16年10月29日決定 要旨
被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。
生命保険と同じ考え方をとれば、受益権は新たな固有の権利として取得しているから、被相続人の相続財産ではないとも考えられます。
また、相続税法も消滅発生型の受益者連続信託の際に、相続税が取れなくなっては困るので相続税法9条の2第2項でみなし相続税扱いにしています。
(贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利)
第九条の二
2 受益者等の存する信託について、適正な対価を負担せずに新たに当該信託の受益者等が存するに至つた場合(第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、当該受益者等が存するに至つた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の受益者等であつた者から贈与(当該受益者等であつた者の死亡に基因して受益者等が存するに至つた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
ただ、法制審議会信託法部会では、信託法の立法過程において、「遺留分制度を潜脱できないことは当然であること」を前提としたうえで、受益者連続信託は有効であると審議していた様です(逐条解説 新しい信託法 補訂版 259頁)。
なお、逐条解説 新しい信託法 補訂版260頁には、「後継ぎ遺贈型の受益者連続の信託において、第2次以降の受益者は、先順位の受益者からその受益権を承継取得するのではなく、委託者から直接に受益権を取得するものと法律構成されることになる」と記載されています。

そうすると、例えば、上記の第3受益者は第2受益者から受益権を承継取得しているのではなく、委託者から第2受益者が死亡してから第3受益者が死亡するまでの期間の受益権を取得しているということになります。
第4受益者も、第3受益者から受益権を承継取得しているのではなく、委託者から第3受益者が死亡してから第4受益者が死亡するまでの期間の受益権を取得しているということになります。
委託者から取得しているという考え方からすれば、遺留分減殺請求ができるのは受益者連続信託で初めの受益者兼委託者が死亡したときだけで、後継の受益者が死亡したときは遺留分減殺請求ができないとも考えられます。
いずれにせよ現時点では判例がありませんので、確定的なことは分かりません。
詳しくは拙著「Q&A 「家族信託」の活用」もご参照ください。
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