家族信託の手続きは自分でできますか?

質問

家族信託を組みたいと思いますが、専門家に依頼せずに自分で手続きができるでしょうか?

回答

専門家に依頼せずに家族信託を組成するのは、現実的には難しいと思われます。

その理由を以下にあげていきます。

専門家でも習得にかなりの費用と時間をかけている

士業などの専門家でも家族信託の本を2~3冊読んだだけで実務を行っている人はほとんどいないと思われます。

専門家向けの様々な家族信託の研修・セミナーを数十時間は受講しているのではないでしょうか。

研修は1講座1万円ぐらいのものもあれば、2,3日にわたって行う20万~30万円ぐらいのものもあります。

家族信託は細かい論点がはっきりしないものも多く、講師によって言っていることが違っているケースもあります。

したがって、一人の講師の研修だけ受ければ実務が行えるかというと、それだけでは不十分だと思います。

様々な講師の話を聴き、その上で最適だと思われる方法を自分で再構築して実務に臨むのです。

また、書籍についても同様で、数十冊ぐらいは家族信託に関する書籍を読んでいると思われます。

これも著者によって考え方ややり方に違いがあるからです。

一般の人が、専門家向けの研修を何十万円も出して数十時間にわたり受講したり、書籍を何十冊も読むのは現実的ではないと思います。

スキームや契約書の落とし穴に気づけるか?

書籍に載っている家族信託の契約書のひな形をコピーすれば自分だけで家族信託の組成ができるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、家族信託の組成は、遺言書や遺産分割協議書などの作成とは難易度が違います。

仮に導入時の組成ができたとしても、後々、運用中に重大な問題が生じる危険性をはらんでいると思われます。

例えば、予定する以外のことで信託が終了してしまった場合、贈与の問題が生じないかどうかという問題があります。

市販されている書籍に載っている信託契約書のひな形は、この問題を考慮していないものも見受けられます。

委託者兼受益者である父親の死亡により信託が終了し、残余財産を長男に帰属させる信託で、「信託終了時の残余財産は長男に帰属させる」としか記述していない文例などもあります。

しかし、信託は委託者兼受益者の死亡のみで終了するとは限りません。

合意によって終了することや、受託者の不存在で終了することもあります。

受益者である父親の存命中に、上記の理由で信託が終了して、残余財産を長男が取得してしまったら、贈与税が課税されることになります。

また、将来的に信託された不動産を売却したい場合、受託者にその権限がきちんと付与されているかどうかという問題もあります。不備があった場合、不動産の売却ができないかもしれません。

その他、売却に関して言えば、信託をしたときに不動産に漏れがあった場合、将来、その漏れに気づいても委託者の判断能力が無くなっていれば、漏れた不動産を売ったり信託したりできないかもしれません。

信託した不動産と一体として使う様な物件(私道など)が漏れていれば、信託した不動産自体も売ることができないでしょう。

受託者が信託事務をできなくなった場合、新しい受託者に代えないといけませんが、受託者が信託事務をできなくなる理由を死亡しか想定していないような信託契約書の文例も見かけます。

判断能力の低下や行方不明などで受託者としての任務を果たせないケースもあるかもしれません。これらのケースが起こっても問題なく信託を継続できる設計になっているのかもチェックすべきポイントです。

その他、人は年齢順に亡くなるとは限りません。信託に関係する人がどんな順番で亡くなっても、信託に問題が生じないかも検証する必要があります。

以上、信託を設計するうえで注意すべき点をいくつかあげました。

これらの検証をしたうえで信託契約書を作成しないと、取りあえずは組成できたとしても、将来的に大きな問題が生じる可能性があるのです。

信託登記の難易度

不動産を信託する場合、受託者名義に所有権移転登記をして同時に信託の登記をします。

このとき、信託目録というのを作成するのですが、その内容は信託契約書の中から必要事項を司法書士が抽出して作成します。

信託契約書から何を抽出すれば良いのかの判断が司法書士でも難しいのです。

適切な信託目録を登記するには十分な経験が必要だと思われます。

信託口口座が作成できるか?

信託口口座を作成できる金融機関は、士業がかかわっていることを信託口口座作成の条件にしていることがあります。

その場合、自分だけで家族信託の組成を行おうとすると、その金融機関では信託口口座が作れないということになります。

組成後の運用ができるか?

家族信託は組成したら終わりではなく、むしろ組成してからが本番です。

受託者が信託財産の管理などを行っていくのです。

受託者は帳簿をつけたり、定期的に財産目録などを作ったりします。

また、税務署に書類を提出しなければならないこともあります。

これらの受託者としての義務などを把握するのも専門家の助言がないと難しいのではないでしょうか。

以上から、家族信託の組成は、家族信託に詳しい専門家に依頼して行った方が良いかと思われます。

詳しくは拙著「Q&A 「家族信託」の活用」もご参照ください。

家族信託 よくある質問


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