相続開始により銀行口座は凍結する
銀行の預金口座の名義人が亡くなった場合、名義人の死亡を知った銀行は預金口座からお金を下ろせなくします。
亡くなった人に相続人が複数いた場合、一部の相続人からの要求でお金を払ってしまうと、他の相続人からクレームが来る恐れがありますし、二重払いをしなければならないリスクがあるからです。
預金を下ろすためには相続人全員の実印、印鑑証明書及び戸籍謄本、相続人を特定するために必要な戸籍謄本が必要となります。
相続人を特定するための戸籍謄本とは、少なくとも亡くなった人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本ということになります。
戸籍謄本は、結婚、転籍、戸籍の改製などがあると新しいものが作成されるので、出生からのものを全部取らないと亡くなった人に何人子どもがいるのか分からないのです。
そして、相続人に直系尊属や兄弟姉妹が入ってくる場合は、より多くの戸籍謄本を集めなくてはなりません。
ただ、戸籍謄本は時間をかければ集まりますが、相続人全員の実印と印鑑証明書は、相続人全員が協力してくれないと手に入りません。
相続による銀行口座の凍結を解除して、預金を下ろすためには、相続人全員の協力が必要なのです。
なお、以前は相続人全員が銀行口座の相続手続に協力してくれない場合、自分の法定相続分に相当する額だけを裁判手続きをして払ってもらうことができました。
しかし、平成28年12月19日に新たな最高裁判例が出てしまい、預金債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるとされました。
最判平成28年12月19日
共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。
つまり、自分の法定相続分相当額だけの払い戻しが不可能となり、共同相続人全員での遺産分割協議が成立しないと預金の払い戻しが受けられなくなりました。
このため、相続人中の一人でも協力してくれない場合は、亡くなった人名義の預金口座からお金が下ろせない可能性が高いです。
相続開始後、亡くなった方の預金をスムーズに下ろすには生前の準備が重要となります。
(司法書士柴崎事務所では預貯金の相続手続の代行も承っております。)
スムーズに銀行口座の凍結を解除するには公正証書遺言
相続開始後、相続人全員の実印と印鑑証明書なしで銀行口座からお金を下ろすには、生前に遺言書を作っておくことが有効です。
例えば、次の文例のように、預貯金を妻に相続させる旨の遺言書を作っておくのです(なお、自筆証書遺言は全部自筆で書かないと無効ですので注意してください)。
遺言者坂戸太郎は、次のとおり、遺言をする。
第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記預貯金を遺言者の前記妻坂戸花子に相続させる。
(2) 埼玉りそな銀行 東松山支店 定期預金 口座番号 1234567
(3) ゆうちょ銀行 通常貯金 記号〇〇〇〇〇 番号〇〇〇〇〇〇〇
(4) ゆうちょ銀行 定期貯金・定額貯金 記号〇〇〇〇〇 番号〇〇〇〇〇〇〇
第2条 遺言者、前各条に記載する以外の遺言者の有する不動産、動産、預貯金、現金その他一切の財産を、前記妻坂戸花子に相続させる。
第3条 遺言者は、この遺言の執行者として前記妻坂戸花子を指定する。
2. 遺言者は、遺言執行者に次の権限を授与する。
平成○○年○○月○○日
埼玉県東松山市○町○丁目○番地○
遺言者 坂戸太郎 印
念のために妻を遺言執行者に指定して、遺言執行者に預貯金の名義変更等をする権限を与えたことを明記しております。
さらに、遺言書自体を自筆証書遺言ではなく、公証役場で作る公正証書遺言にしておけば、相続人全員の実印と印鑑証明書を要求してくる金融機関はほとんどないでしょう。
遺言書がある場合の銀行での相続手続は、遺言書と亡くなった人の最後の戸籍謄本、預金を相続した人の戸籍謄本、実印、印鑑証明書などがあればできるでしょう(ケースによって書類が変わるかもしれませんので詳細は金融機関にご確認ください)。
まとめますと、遺言書を生前に作っておけば、相続開始後に相続人全員の実印と印鑑証明書を要求されないので、スムーズに預金の相続手続ができて、お金を下ろせるということになります。
一点、注意したいのは、自分で書く自筆証書遺言などの場合は、相続開始後、家庭裁判所での検認手続が必要になります。
検認手続とは、遺言書の偽造・変造などを防ぐために家庭裁判書で相続人立ち合いのもと、遺言書に記載された内容を確認する作業です。
この検認手続をするのに1ヶ月前後かかるので、その分、預金の相続手続が遅くなってしまいます。
公正証書遺言であれば、検認手続をしなくて済みますから、遺言書を作るときは公正証書遺言にした方が良いでしょう。
また、自筆証書遺言の場合は書き方を間違えると無効になったり、遺言の解釈に疑義を生じる場合がありますから、スムーズに相続手続をするためにも公正証書遺言にするべきだと思われます。
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