自筆証書遺言のメリット・デメリット

遺言者が自らの手で書く遺言書を自筆証書遺言といいます。

民法第968条に規定されており、遺言者が、遺言書の全文、日付、氏名を自らの手で書いて、押印して作成します。

(自筆証書遺言)
第968条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2  自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。


自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリットは、何と言っても、自分で書くことができるので、遺言書の作成時の費用を抑えられることでしょう。

紙、ペン、印鑑があれば作成できるので、思い立ったらすぐに作成することができます。

費用がかからないので、一回遺言書を作った後で内容を変えたい場合、新たな遺言書を作りやすいという面もあります。

遺言書は1回作っても、後で撤回できるのです。なお、撤回は遺言の方式で行う必要があります。

民法第1022条  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

また、遺言書を作った後に、新たな遺言書を作った場合、前と後の遺言書の内容で抵触する部分は、前の遺言書を撤回したものとみなされます。

民法第1023条  前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2  前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

その他、遺言者が遺言書を故意に破棄した場合も、破棄した部分の遺言を撤回したものとみなされます。

民法第1024条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

この様なルールがあるので、新たな自筆証書遺言を作ることによって、前の遺言書をすぐに撤回することができます。


自筆証書遺言のデメリット

費用が安く済むことが大きな利点となる自筆証書遺言ですが、自分で書くと言う性質上、色々問題が生じることが多いです。

まず、民法第968条に定められた要件通りに作成しないと無効な遺言書となってしまいます。

(自筆証書遺言)
第968条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2  自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

日付を書かなかったり、押印してなかったり、ワープロで作成してしまったりして無効になってしまっている遺言書を見ることは少なくありません。

また、自筆証書遺言の訂正方法も民法第968条第2項に定められていますので、その通りに訂正しないと訂正の効力が生じません。

訂正方法を間違えている自筆証書遺言も良く見ます。


遺言書の作成方法は民法第968条の通りに行っていても、内容が相続手続をするには不十分な自筆証書遺言も多いです。

例えば、通常は相続人に財産を承継させたい場合は、「〇〇に次の財産を相続させる」というように「相続させる」と言う文言を使います。

相続人以外の場合は、「遺贈する」という文言を使います。

この文言が、「〇〇に任せる」、「〇〇に一任する」、「〇〇にお願いする」などと言った文言では、色々な解釈ができてしまうので相続手続ができないかもしれません。


その他、財産が特定されていない場合も相続手続ができないかもしれません。

例えば、「土地1個を相続させる」としか書いていない遺言書であれば、どの土地なのか良く分かりません。


遺言執行者を指定していない場合も、相続手続がスムーズにいかない可能性があります。

遺言書を使った相続手続の中には、遺言執行者がいない場合、相続人全員が協力して手続を行わなければできないこともあります。

家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てれば良いのですが、あらかじめ遺言書で遺言執行者を指定しておいた方がスムーズにいきます。


また、自筆証書遺言は相続開始後、家庭裁判所で検認を受けなければ、相続手続ができません。

検認手続をする作業が入るので、その分、不動産や預貯金の相続手続が遅くなってしまうでしょう。

この点、公証役場で作る公正証書遺言であれば、検認手続がいらないので、その分、早く相続手続ができます。

民法第1004条  遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2  前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3  封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。


まとめ

自筆証書遺言のメリットとデメリットを見てきましたが、問題は、自筆証書遺言は作成方法を間違えて無効になるケースが多いと言うことです。

結局、無効な遺言書では残された相続人達が困ってしまうかもしれません。

できれば、費用はかかったとしても、公証人の作る公正証書遺言にしておいた方が良いでしょう。


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