遺言書があっても相続人全員の印鑑証明書を要求する金融機関がある
特定の相続人が銀行の預貯金を相続する旨の遺言書があっても、金融機関(の担当者)によっては相続人全員の印鑑証明書と実印を要求する所があります。
法律上は遺言書によって、その相続人が預貯金を相続したので、単独で相続手続ができるはずですが、銀行の独自ルールにより相続人全員の書類を要求するのです。
しかし、相続人の中にその手続に協力してくれない人がいると、預貯金の相続手続ができません。
銀行に相続人全員の書類を要求されないために注意すべき3つのポイントを解説します。
1.遺言書は公正証書遺言で作成する
主に使われている遺言書は、自分で書く自筆証書遺言と、公証人が作成する公正証書遺言の2つです。
このうち、公正証書遺言の場合は相続人全員の書類を要求しないが、自筆証書遺言の場合は要求するという取り扱いの金融機関もあります。
これは、自筆証書遺言の場合は、自分で書いているために、厳格な遺言の形式を満たしているかどうかの判断が難しいという理由もあるかもしれません。
金融機関の相続手続をスムーズに行うためには、公正証書遺言を選択すると良いでしょう。
2.遺言書の財産の記載は特定できるように詳細に書く
通常、遺言書に預貯金を記載する場合、銀行名、支店名、口座種類、口座番号などで特定をします。
ただ、「遺言書の所有する一切の財産」などと包括的な記載をすることもあるかもしれません。
法律上は、この様な記載でも有効な遺言でありますが、その金融機関の独自ルールにより包括的な記載では、相続人全員の書類を要求するという所もあるようです。
貸金庫や投資信託などを特定しなかったために、相続人全員の書類を要求されることもあるようです。
この様なことにならないように、財産はなるべく詳細に記載して特定した方が良いと思います。
3.遺言執行者を指定する
3つ目のポイントは、遺言書で遺言執行者を指定し、相続開始後に遺言執行者が手続することです。
遺言執行者がいるケースでは、預貯金の相続手続を遺言執行者のみの署名捺印(実印)で行えたり、遺言執行者と財産をもらう人の連署で行えるという取り扱いの金融機関が多い印象があります。
遺言執行者には、預貯金を相続する相続人を指定することもできますので、遺言施行者に指定しておいた方がスムーズに手続が行える場合が多いでしょう。
なお、念のため遺言執行者の権限して、「遺言執行者は、預貯金の名義変更・解約・払戻しその他この遺言の執行に必要な一切の行為をすることができる。」の様に遺言書に記載し、遺言執行者が単独で預貯金の手続ができることを明記した方が良いと思われます。
公正証書遺言で遺言執行者がいれば相続人全員の書類は要求されない金融機関
上記のように念入りに金融機関対策をしても、預貯金の相続手続に相続人全員の印鑑証明書と実印を要求する金融機関は存在します。
その様な金融機関の預貯金は遺言書を作成する前に解約して、別の金融機関にお金を移してしまった方が相続手続が円滑に進むかもしれません。
私の知っている中で、公正証書遺言で遺言執行者が付いていれば相続人全員の書類を要求しない金融機関を次に挙げておきます(内容は随時更新します)。
- 東京三菱UFJ銀行
- 埼玉りそな銀行
- 武蔵野銀行
- 埼玉縣信用金庫
- 東和銀行
以上を参考にして、相続手続がスムーズに行くように遺言書を作ってください。
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