信託銀行の言う遺言信託は法律用語ではない
最近、信託銀行の遺言信託という広告を見かけます。
法律用語の遺言信託というのは、信託法上で定められていて、遺言による信託のことを指します。
ただ、信託銀行はこの様な意味で遺言信託という言葉を使っていません。
信託銀行の遺言信託サービスは、信託銀行が公正証書遺言を作るサポートをして、遺言書を保管し、相続発生後に遺言執行をするというものです。
法律用語の遺言信託とは無関係であり、ただ、遺言書を作り、保管し、相続が発生したら預貯金等の相続手続をするという内容です。
信託銀行の遺言信託は高いという声があります
「信託銀行で遺言書の作成を頼んだら100万円以上かかりそうだから他に頼みたい」という声を聞くことがあります。
ある信託銀行の遺言信託サービスのパンフレットを見てみました。
まず、契約時に30万円(+税)の手数料がかかると書いてあります。
当事務所の公正証書遺言作成サポートの報酬が7万円(+税)ですので、30万円という金額はずいぶん高く感じます。
そして、信託銀行の遺言信託サービスは、遺言書の作成、保管、遺言執行がセットになってしまってます。
遺言執行は預貯金などの相続手続が主だと思われるところ、その手続は預貯金を相続することになった相続人でも充分できます。
つまり、遺言執行者に家族を指定しておけば、その家族において預貯金の相続手続はできると思われるのです。
そして、家族の方で遺言執行が難しいと思ったら第三者のプロに委任できる条項を入れておけば、相続発生後に家族が判断してプロに委任できます。
ところが、信託銀行の遺言信託サービスは、遺言執行者に初めから信託銀行を指定しています。
信託銀行のパンフレットによれば、遺言執行の最低報酬額は100万円(+税)で、執行財産の価額に応じて0.5~2%の報酬となっております。
具体的にいくらぐらいになるのか、信託銀行のパンフレットを基に計算してみました。
参考に、当事務所が遺言執行手続をした場合の報酬も隣りに載せます(なお、当事務所の遺言執行はオプションであり、遺言書作成サポートを依頼したからといって必ず当職を遺言執行者に指定しなければならない訳ではありません)。
ある信託会社(税別) | 当事務所(税別) | |
---|---|---|
遺言書作成時 | 30万円 | 7万円 |
遺言書保管料 | 6千円 | 6千円 |
遺産5千万円の執行報酬 | 100万円 | 79万円 |
遺産1億円の執行報酬 | 175万円 | 129万円 |
遺産2億円の執行報酬 | 275万円 | 199万円 |
遺産3億円の執行報酬 | 375万円 | 269万円 |
表を比較していただくと、まず、遺言書作成の段階で、30万円と7万円とだいぶ費用に開きがあります。
そして、執行報酬ですが、遺産が1億円ぐらいになると数十万円の差ができます。
信託銀行は執行報酬も割高ですが、サービス内容にも注意しなければなりません。
まず、信託銀行は遺留分を侵害するような内容の遺言の作成を嫌うということです。
これは相続人同士の揉め事に巻き込まれたくないからだと思われます。
そして、相続人同士で相続争いがあると、信託銀行は遺言執行者に就任しないことがあるようです。
信託銀行の遺言信託についてのまとめ
信託銀行の遺言信託サービスについては次のようにまとめることができます。
- 報酬が高い
- 遺言執行者を信託銀行としなければならない
- 相続争いがあると手を引く
これに対して当事務所の遺言書作成サポートは次のとおりです。
- 遺言書作成時の費用は7万円(+税、実費)
- 遺言執行者を家族とすることも可能(家族がやれば執行報酬はかからない)
- 遺言執行報酬も信託銀行より安い
- 遺言執行者に就任した場合、職務を全うする
当事務所の遺言書作成サポートについては、こちらからご覧ください。
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- 認知症で預金口座が凍結してしまうリスクを回避する信託
- 認知症の配偶者のために財産管理する人を用意しておく信託
出版のお知らせ
遺言書の書き方を分かりやすく解説した本を執筆しました。
計81個の文例を掲載しております。
特典として、すべての文例のワードファイル、遺言内容の整理に使える遺言書設計シートのワード・PDFファイルなどをダウンロードできます(ダウンロード方法は書籍の235ページをご覧ください)。