推定相続人は、相続開始前に相続放棄できるか?

相続放棄

相続の開始前にあらかじめ相続放棄することはできるのでしょうか?

民法第915条には次のとおり規定されています。

民法
第915条  
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

相続放棄をする場合は、自己のために相続の開始があったことを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をします。

相続の開始前に相続放棄することを認めておらず、あらかじめ相続放棄しても無効です。

次の裁判例も同様の見解を示しています。

横浜地裁川崎支部昭和44年12月5日判決

遺産の範囲は相続の開始により初めて確定するのであつて、その相続放棄や分割協議の意思表示は、そのとき以後における各相続人の意思によりなさるべきものであるから、当事者間で事前にこれらの意思表示をなすも何らの効力を生じないものといわなければならない。

このことは、吾が民法が、相続放棄は相続開始後一定期間内に、家庭裁判所に対する申述によりなさるべきことを定め(民法第九一五条第一項)、また、相続開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずると定めている(同法第一〇四三条第一項)ことによつても明らかである。

東京家裁昭和52年9月8日審判

現行法は相続開始後における家庭裁判所に対する相続放棄の申述制度をもうけ、また生前における遺留分放棄許可制度をもうけているが、生前における相続放棄ないし放棄契約については明文の規定を置いていない。このため、生前における相続放棄ないし放棄契約はこれを否定するのが通説及び判例の傾向のように看取される。

生前における遺留分の放棄が認められていることとの権衡及び当事者の自由意思の尊重(私的自治の原則)の点を考えると、相続債権者に相続債務の不承継を対抗しうるものとしてではなく、相続人間の内部的な合意としての相続の放棄であれば、これを認めても、放棄者の意思さえ明確に認められる限り、特に幣害もなく、かえつて合理的ではないかと思料され、また社会的事実としては法律的知識の不十分もあつて、本件のように相続の生前放棄の意味合いを含めて遺留分の放棄が行なわれているのではないかと推測されるところ、生前放棄を認めた方がこれらの実態にも合致するのではないかと思料されるのであるが、現行法の建前として右のように解することにはなお疑問があり、当裁判所としてはなお消極に解さざるをえないところである。

遺産分割協議

相続開始前の事前の遺産分割協議も同様に無効です。


遺留分放棄

相続開始前に遺留分の放棄をすることは認められています。

民法第1043条に家庭裁判所の許可を得られれば、相続開始前に遺留分を放棄できると規定されています。

民法
第1043条  相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

ただし、遺留分を放棄する者が、他に別の財産を取得するなどの利益を得ているかなどが審査されますので、必ずしも許可が得られるとは限りません。


なお、相続開始後であれば、遺留分の放棄は家庭裁判所の許可なしにすることができます。


相続放棄の手続は司法書士へ

相続放棄は相続の開始があったことを知ってから3ヵ月以内にする必要があります。

万が一、間に合わないと借金を相続してしまうことになります。

司法書士は、面倒な戸籍の収集なども代行することができますので、心配な方はぜひご相談ください。

費用などの詳細は相続放棄の申立のページをご覧ください。

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