終活とは?

終活とは、「人生の終わりのための活動」の略です。

生前にお墓や葬儀の準備をしたり、不要な物を整理・処分したり、医療・介護について備えたり、財産の相続を円滑に行えるように準備したりする活動などが挙げられます。


司法書士としては、相続が発生してからの不動産の名義変更や預貯金の相続手続などを業務として行っていますが、相続手続に非常に苦労する事案を見てきています。

これらの事案も、生前にしっかりとした準備をしておけばスムーズに相続手続ができていたものと思われます。

相続発生後の名義変更を取り扱う司法書士の立場から、財産の相続を円滑にするためにはどの様な準備をしたら良いかをアドバイスしたいと思います。


通常の相続手続はどんなことをするのか?

家
一般の家庭でも多いと思われる自宅不動産と預貯金の相続手続について説明したいと思います。

遺言書を作成していなかった場合の手続を述べます。




戸籍を集める

遺言書がない場合、基本的には、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本(原戸籍、除籍)を集めます。

戸籍謄本は、結婚や転籍、戸籍の改正などにより複数存在しています。

本籍地が他の市町村から移ってきている場合は、以前に本籍地があった市町村でも戸籍謄本などを取得しなければなりません。

相続人が子どもではなく、直系尊属(親など)や兄弟姉妹である場合は、さらに戸籍謄本の収集は複雑になります。

相続手続で最も手間がかかるのが、この戸籍謄本の収集です。


遺産の分け方を話し合う

戸籍謄本を集めて、亡くなった人の相続人が誰かと言うことをはっきりさせたら、次に、相続人同士で遺産の分け方を話し合います。

これを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作って相続人全員が実印で押印します。

しかし、この遺産分割協議がまとまらないと、不動産や預貯金の相続手続ができずに苦労することになります。

例えば、夫婦に子どもがいない場合で夫が亡くなったとしたら、夫の兄弟姉妹が相続人に入るケースがあります。

この場合、妻は夫の兄弟姉妹と遺産分割の話し合いをしなければなりません。

遺産分割協議がまとまらない可能性の出てくる事例だと思います。


また、相続人の中に、行方不明の人、認知症や障がいにより判断能力が不十分な人、未成年者などがいる場合は、家庭裁判所での諸手続が必要になります。

そして、家庭裁判所が関与した場合、対象となった相続人に法律で決められた相続分(法定相続分)ぐらいの財産を取得させる内容の遺産分割にするように言われる可能性が高いです。


法務局(登記所)や銀行で相続手続をする

銀行
戸籍謄本を集め、遺産分割協議書への押印ができたら、不動産の相続登記をしたり、銀行で預貯金の相続手続をします。

ここで注意したいのは、銀行での相続手続です。

1つの銀行につき2時間ぐらい時間がかかることもよくありますし、「書類を確認しておきますので、後日、来てください。」と言われることも珍しくありません。

銀行での相続手続は時間が非常にかかると思っておきましょう。

したがって、少額の残高の銀行預金は、生前に解約して他の口座にお金を移した方が、相続の手続は楽になります。


終活として遺言書を作成する

契約書

相続が開始した後の大量の戸籍謄本を集める、遺産の分け方を話し合う(遺産分割協議)などの手続を省くためには、遺言書を作っておくと良いでしょう。

遺言書を作っておけば、亡くなった人の生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本を取る必要はなくなります。

亡くなった人の戸籍としては、亡くなったことが分かる最後の戸籍だけで済みます。

そして、遺言書に遺産の分け方について記載してありますので、相続開始後に相続人間で分け方を話し合う必要がありません。
(ただし、遺留分という相続人に最低限認められた権利を侵害する内容の遺言だと、もめる可能性があります。)

遺言書を作ることによって、集める戸籍謄本も少なくなり、遺産分割協議をしなくても遺言書を使えば、不動産の相続登記や金融機関の預貯金の相続手続ができます。

預貯金の相続手続がスピーディーにできることは大きなメリットと言えるでしょう。


遺言書は公正証書遺言がお勧め

主に活用されている遺言の形式として、自分で書く自筆証書遺言と、公証人が作成する公正証書遺言の2つがあります。

自筆証書遺言は、自分で書けば良いので費用をかけなくて済むというメリットがありますが、厳格な遺言書の形式を満たしていないと無効な遺言となってしまいます。

自筆証書遺言が無効であると、結局、戸籍を全部集めて、相続人のハンコ(実印)をもらうという手続が必要になってしまいます。

自筆証書遺言の大きな欠点です。

なお、自筆証書遺言の場合は、相続開始後に検認という家庭裁判所での手続が必要となります。


自筆証書遺言に対して、公証人の作成する公正証書遺言は、形式を間違えて無効になるという危険性を防ぐことができます。

また、家庭裁判所での検認手続もいりませんので、相続開始後にスムーズに手続ができます。

費用はかかってしまいますが、確実な相続手続を考えると、公正証書遺言を選ぶことをお勧めいたします。


遺言書を作った方が良いケース

一般的なケースでも遺言書を作ることによって、相続手続はスムーズになりますが、次の様なケースでは更に遺言書を作る必要性が上がると思われます。

  • 子どもがいないので配偶者(夫または妻)に全財産を相続させたい。
  • 前妻との間に子どもがいるが、現在の妻や子どもとは面識がない。
  • 相続人の中に連絡が取れない人がいる。
  • 相続人以外の人(内縁の妻、息子の妻、おじ、おば)などに財産を上げたい。
  • 妻に多くの財産を上げたい。
  • 介護をしてくれた子どもに多くの財産を上げたい。
  • 事業をやっているので後継者に必要な財産を相続させたい。
  • 相続人になる予定の人の中に認知症や障がいで判断能力が不十分な方がいる。
  • 相続人になる予定の人の中に未成年者がいる。

司法書士は、不動産の相続登記や預貯金の相続手続(司法書士法施行規則31条業務)を通じて、相続開始後に手続が煩雑になってしまうケースを見てきています。

生前にしっかりとした準備をすることによって、煩雑な手続を回避することもできます。

終活のアドバイザーとして、司法書士に相談してみてはいかがでしょうか?


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