はじめに
不動産を持っている人が亡くなって、その不動産を相続登記する場合、複数の相続人の共有名義にすることはお勧めしません。
基本的に不動産の売却には共有者全員の協力が必要となります。
不動産を共有で相続した場合、その後、相続を繰り返すと、面識のない人同士で一つの不動産を共有することになり、売却時の協力が難しくなる可能性があります。
また、相続を繰り返すと、共有者がどんどん増えていき、全員の協力を得られないということも考えられます。
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亡くなった人の不動産を誰の名義にする?
不動産の所有者である父郎さんが亡くなったとします。
父郎さんの相続人は、妻・松子さんと、長男・一郎さん、長女・竹子さんです。
仮に、不動産を長男・一郎さんと長女・竹子さんの共有名義で相続登記したとしたら、将来、どんな問題が生じるでしょうか?
不動産を売るには共有者全員の協力が必要
不動産を長男・一郎さんが2分の1、長女・竹子さんが2分の1ずつの持分割合で相続登記したとします。
共有者の一郎さんの持分2分の1だけを買いたいという買主はいるでしょうか?
2分の1だけの持分を買い取っても、買主が実際にこの不動産を使うのは難しいでしょう。
別の共有者の竹子さんが2分の1の権利を持っているからです。
共有持分の一部を買っても、買主には不動産の使い道がないのです。
そのため、不動産を売るには、基本的には共有者全員が協力して売却するということになります。
共有持分を買い取って、他の共有者と交渉して、全体としての売却を計画するような業者もいますが、通常は共有者全員が協力して売却するとお考え下さい。
共有者が相続を繰り返していくと
不動産を2分の1ずつ共有で取得した長男・一郎さんと長女・竹子さんの今後を考えてみます。
2人の存命中は、まだ、兄妹ですから良いかもしれません。
しかし、相続を2代、3代、4代と繰り返していくとどうなるでしょうか?
一郎さんと竹子さんの孫やひ孫の代まで共有状態が解消されないまま、相続を繰り返していくと、あまり面識のない人同士で一つの不動産を所有していることになります。
例えば、あなたは、ひいおじいさんの兄弟姉妹のひ孫と面識があるでしょうか?
私は、ひいおじいさんとも会ったことがありませんし、その兄弟姉妹が誰なのかも知りませんし、そのひ孫も知りません。
その様な関係の人達が不動産を共有しているとしたら、協力して売ろうにも、まず連絡先が分からないという話になって、売却が難航することが予想されます。
また、相続を繰り返していくうちに相続人がどんどん増えていく可能性があります。
亡くなった人の相続人は一人とは限らないからです。
2代、3代、4代と相続を繰り返していくごとに相続にが増えて、一つの不動産を10人や20人で共有している状態になることも考えられます。
そうすると、共有者のうちの誰か一人が不動産を売ろうと思って他の共有者の協力を得ようと思っても、まず、誰が共有者か調べるのが大変だという話になります。
連絡が取れたとしても、10人、20人の共有者が売却に協力してくれるか分かりません。
中には行方不明の人や認知症で判断能力が無い人も出てくるかもしれません。
そして、共有者が多いという事は、不動産が売れたとしても一人一人に入ってくるお金は少額になってしまうかもしれません。
少額のお金のためにわざわざ面倒な手続を取りたくないという共有者も出てくる可能性があります。
共有名義での相続登記はお勧めしない
ある程度の期間で売却するのでなければ、共有名義で相続登記をするのは避けた方が良いでしょう。
今回の例でいえば、長男・一郎さんと長女・竹子さんの共有名義で相続登記しても、二人の存命中に売却してしまうなら問題は生じないかもしれません。
しかし、二人の存命中に売却しないなら、相続を繰り返していくと相続人が増えて、見知らぬ人同士で不動産を共有している状態になるので、売却が難しくなります。
したがって、不動産は基本的には単独名義で相続登記すべきです。
主だった財産が不動産しかない場合、預貯金を相続する額とかで相続人間の調整ができないかもしれません。
そんなときは、遺産分割協議において不動産を取得した相続人から他の相続人に代償金を払うなどして、お金で調整するという方法も考えられます。
代償分割の遺産分割協議書
被相続人 父郎
生年月日 昭和○年○月○日
本籍 埼玉県東松山市○町○丁目○番地
令和○年○月○日上記被相続人父郎の死亡により開始した相続における共同相続人全員は、民法908条に基づく遺言による分割の指定及び禁止のないことを確認したうえで、被相続人の遺産を協議により以下のとおり分割する。
1.次の不動産は松子が相続する。
所 在 東松山市○町○丁目
地 番 ○番○
地 目 宅 地
地 積 ○○・○○㎡
所 在 東松山市○町○丁目 ○番地○
家屋番号 ○番○
種 類 居 宅
構 造 木造スレート葺2階建
床 面 積 1階 ○○・○○㎡
2階 ○○・○○㎡
2.次の預貯金は松子が相続する。
○○銀行 東松山支店 普通預金 口座番号1234567
3.松子は1の代償として次のとおり支払う。
・ 一郎に対して金○万円
・ 竹子に対して金○万円
4.相続人全員は、本協議書に記載する以外の遺産を、松子が取得することに同意した。
上記のとおりの協議が成立したので、この協議の成立を証明するために相続人ごとに本協議書を作成する。
令和〇〇年〇月〇日
埼玉県東松山市○町○丁目○番○号
松子 (実印)
埼玉県東松山市○町○丁目○番○号
一郎 (実印)
埼玉県東松山市○町○丁目○番○号
竹子 (実印)
代償金で精算する遺産分割協議書の文例を掲載しています。
不動産は松子さんが相続して、その代償金として3で他の相続人に対してお金を払っています。
遺産分割協議の中で代償金として払っているので、これについて贈与税はかかりません。
まとめ
今回は、不動産を共有名義にしてはいけない理由を解説してきました。
不動産の売却には、基本的に共有者全員の協力が必要となるからです。
不動産を共有してしまった場合、相続を繰り返すと、面識のない人同士で共有することになります。
また、相続を繰り返すと、共有者がどんどん増えていく可能性があります。
こうなってしまうと、不動産を売りたくても共有者全員の協力が得られずに不動産を処分できないくなってしまうかもしれません。
数年内に売るのでなければ、不動産を共有名義で相続登記するのは避けた方が良いでしょう。
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