父親が亡くなった場合、実家を誰名義にする?
自宅不動産を所有している父親が亡くなった場合、自宅不動産をそこに住んでいる母親名義に相続登記した方が良いのでしょうか。
それとも、そこに住んでいない子ども名義に相続登記した方が良いのでしょうか。
この記事では、自宅不動産に母親が住んでいるが、別居している子ども名義に相続登記した場合のリスクについて解説します。
事例
例えば、甲太郎さんという方がいて自宅不動産を持っていたとします。
そして、甲太郎さんの家族構成は、妻・松子さん、長男・一郎さん、長女・竹子さんだったとします。
甲太郎さん名義の自宅不動産には、妻・松子さんが住んでいて、二人の子どもは別に住んでいたとします。
このような状況で、甲太郎さんが亡くなった場合、自宅不動産を妻・松子さんの名義に相続登記した方が良いのか、同居していない長男・一郎さん名義にした方が良いのかについて検討したいと思います。
同居していない子どもの名義にした場合のリスク
甲太郎さんから妻・松子さん名義に相続登記しても、その後、松子さんが亡くなれば、また子ども名義に相続登記をすることになります。
相続登記が2回必要になってしまうので、甲太郎さんが亡くなった時点で子ども名義に相続登記してしまおうと考えなる方もいらっしゃると思います。
ただ、同居していない子ども名義にした場合のリスクがあります。
甲太郎さんが亡くなった時点で、妻・松子さんが住んでいる自宅不動産を、同居していない長男・一郎さん名義に相続登記したとします。
その後、万が一、妻・松子さんよりも先に長男・一郎さんが亡くなった場合、妻・松子さんが住んでいる自宅不動産は、長男・一郎さんの配偶者や子などの相続人が取得することになります。
妻・松子さんからすれば、少し遠い間柄の人に自宅不動産の所有権が行ってしまうことになります。
場合によっては、住みづらくなってしまうこともあるかもしれません。
住んでいる人名義にすると不動産売却時の税金が安くなる可能性がある
不動産を売ると、翌年、売買代金から取得費などを引いた額に対して、約20%~39%の譲渡所得税を納めることになります。
約20%か約39%かは、所有期間の長短によるのですが、5年超の場合は約20%となります。
不動産を買ったときの金額が分かれば取得費として売却代金から引いて(その他、売る際の仲介手数料や印紙代などの譲渡費用も引けます)、その額に約20%をかけて、譲渡所得税を計算します。
マイホームを売った場合は、売買代金から、さらに最高3000万円まで控除できる特例があります。
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」といいますが、実際に住んでいる人の名義に相続登記すれば、この特例が使える可能性が残ります。
つまり、妻・松子さん名義に相続登記して、妻・松子さんの存命中に自宅不動産を売却した場合、他の要件もありますが、3000万円の特別控除の特例が使える可能性があります。
自宅不動産が3000万円で売れたとすれば、ここから3000万円引けるので、譲渡所得金額は0円です。0円に20%をかけても0円なので、譲渡所得税は発生しないということなります。
母親名義にしたときのリスク
自宅不動産を妻・松子さん名義にした場合のリスクを考えてみましょう。
将来、妻・松子さんが認知症になり施設に移り住んで、自宅が空き家となったとします。
この場合、空き家となった自宅不動産を売ろうとしても、妻・松子さんが売買契約を理解できないということだと、成年後見人等を選任しないと売却ができない可能性があります。
また、妻・松子さんに成年後見人をつけても、さらに、居住用不動産を売るには、家庭裁判所の許可が必要となります。
そのため、成年後見人をつけても、絶対に売却できるとは断言できません。
家族信託で子どもが不動産を売却できるようにしておく
認知症等により不動産を売却できなくなることを回避するために、家族信託が活用できます。
妻・松子さんが自宅不動産を相続したら、妻・松子さんの判断能力がしっかりしているうちに、不動産を子どもに信託しておくのです。
信託すれば、それ以降は子どもの方で、不動産を売却手続できます。
手続の流れについて、不動産を長男・一郎さんに信託するケースで説明します。
まず、不動産の所有者となった妻・松子さんと、長男・一郎さんとの間で信託契約を結んで、不動産を信託します。
信託すると、不動産の形式的な所有者は長男・一郎さんとなります。
信託契約書の中で、長男・一郎さんにどの様な権限を与えるか決めることができますが、不動産を売却する権限を与えておけば、一郎さんが不動産を売ることができます。
将来、万が一、妻・松子さんが認知症等になって施設に移り住んだら、松子さんに後見人等をつけずに、長男・一郎さんが不動産を売却できます。
なお、売却代金は長男・一郎さんのものになる訳ではなく、一郎さんが信託用の口座で管理し、松子さんに生活費として渡したり、施設や医療費などの支払に使ったりなど、松子さんのために使用します。
相続税申告が必要なら税理士に分け方を相談
甲太郎さんが亡くなって相続税申告が必要な場合、遺産の分け方によって相続税の金額が変わってきます。
したがって、相続税申告が必要な場合は、遺産の分け方を税理士に相談しましょう。
相続税の課税対象となる財産から葬儀費用や債務などを引いた額が、相続税の基礎控除額を超える場合、10ヵ月以内に相続税の申告が必要となります。
相続税の基礎控除額は次の式で計算します。
3000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人が一人なら3600万円、二人なら4200万円、三人なら4800万円となります。
以降、法定相続人が一人増えるごとに600万円ずつ増えていきます。
この基礎控除額を超えるか、超える心配がある場合は、税理士に相談しましょう。
配偶者の税額軽減
分け方によって相続税の金額が変わる理由として、配偶者の税額軽減と、小規模宅地等の特例があげられます。
配偶者は1億6000万円か、法定相続分のどちらか多い額までは、財産を相続しても、相続税がかかりません。
このため、配偶者にどれぐらい相続させるかによって、相続税の金額が変わってきます。
ただし、1億6000万円分までの財産について税金がかからないからといって、配偶者にたくさん相続させてしまうと、その後、その配偶者が亡くなって、子が相続した際に、たくさん相続税がかかってしまうかもしれません。
一次相続と二次相続のトータルの税金を考えて、遺産の分け方を決める必要があるので、この点も税理士に相談した方が良いでしょう。
小規模宅地等の特例
被相続人(亡くなった人)の自宅の敷地については、配偶者や、被相続人と同居していた親族が取得すると、相続税の課税価格を80%減額できます。
「小規模宅地等の特例」といいますが、この特例を使える人が自宅の敷地を相続した方が良いという話になります。
したがって、特例が使えるかどうかも含めて、相続税の申告が必要な人は税理士に相談した方が良いでしょう。
まとめ
この記事では、母親が住んでいる自宅不動産を子どもの名義に相続登記した場合のリスクについて解説しました。
また、実際に住んでいる人名義にした場合、マイホームを売ったときの3000万円控除が使える可能性が残ります。
逆に、母親名義にした場合のリスクとしては、認知症になったときに売却のため後見人等の選任が必要になる可能性があります。
いずれにせよ、相続税申告が必要な場合は、遺産の分け方によって相続税の金額が変わってきますので税理士に相談した方が良いでしょう。
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