はじめに

売れない不動産を手放すことはできるのでしょうか?

まず、自治体に寄付するのは難しいでしょう。

そして、土地の所有権を放棄することは、2020年10月現在ではできません(将来において法改正がなされる可能性はありますが)。

親御さんなどがいらない不動産を持っている場合、相続のタイミングで遺産全部を相続放棄するということも考えられます。
しかし、相続人全員が相続放棄してしまった場合、家庭裁判所で相続財産管理人をつけないと、管理義務が残るという問題があります。

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売れない不動産の例

売れない土地の例としては、農地、山林、僻地の別荘地、原野商法で買ってしまった土地、家が建てられない土地などがあります。

まず、農地ですが、農地売却には、農地法の許可(地域によっては届出)が必要となります。

市街化調整区域内だと、農地は農家しか買えないという話になるのですが、農地を買い足して事業を拡大しようという農家も少ないので、買い手をみつけるのは難しいです。

市街化調整区域内でも地域によっては家が建てられたり、太陽光発電設備なら設置できたりすることもあるので、売れる可能性はゼロではありません。

しかし、農地にしか使えない地域ですと、売るのが困難となります。

山林を売るのもなかなか難しいでしょう。

僻地の別荘地、原野商法で買ってしまった土地なども、わざわざ買いたいという人をみつけるのは困難です。

その他、道路に面していないなどの理由で、家が建てられない土地も売りにくいでしょう。

不動産を持っていれば責任を負う

不動産を持っていることにより発生する費用やリスクがあります。

例えば、草が伸びてくれば草刈りをしないと近隣から苦情が来るかもしれません。

庭木が茂ってしまっても同じです。庭木の剪定を定期的に行う必要も出てくるでしょう。

空き家を所有している場合は、空き家の管理も行う必要があります。

適正に管理していかないと、空き家を原因とする事故が起きて、損害賠償請求を受ける可能性あります。

例えば、空き家が火災を起こしたり、倒壊によって近隣に被害を出す可能性もあります。

外壁材の落下によって誰かがケガをしたり、死亡する可能性もあります。

空き家で害虫や害獣の繁殖して、近隣の住宅にも被害を及ぼすケースもあるかもしれません。

なお、固定資産税がかかっている物件であれば、継続的に固定資産税を払い続けなければなりません。

いらない不動産を自治体に寄付できるか?

いらないからと言って、不動産を自治体に寄付するのは基本的に無理でしょう。

価値のない不動産の寄付は、自治体が受け付けない可能性が高いです。

なぜなら、まず、不動産を自治体のものにすることによって、自治体がその不動産を管理しなければならなくなります。

価値のない不動産であれば、自治体もそんな管理コストを払いたくないでしょう。

また、固定資産税がかかっている不動産であれば、自治体のものにすることによって、固定資産税が入ってこなくなり自治体の減収となってしまいます。

不動産の所有権放棄ができるか?

2020年10月現在においては、土地の所有権放棄はできません。

不動産をいらないからと言って、所有権放棄をし、国に返すということはできないのです。

この点、現在、国の方で土地の放棄について検討しているようですので、将来においては法改正があって放棄ができるようになる可能性はあります(しかし、ハードルは高くなりそうですが)。

法改正などがありましたら、追ってブログやYoutubeなどでお知らせします。

相続のタイミングで相続放棄するか?

亡くなった人がいらない不動産を持っていた場合、相続放棄をしてその不動産を引き継がないという手段も考えられます。

家庭裁判所で相続放棄をすれば、いらない不動産も含めて亡くなった人の遺産全部を相続しないという話になります。

いらない不動産だけ相続しないというのは無理で、全財産を相続できません。

相続放棄をする場合は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から」3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続をします。

「自己のために相続の開始があったことを知った時から」というのは、亡くなった人が死亡したことを知り、自分が法律上相続人となったことを知ったときからという意味です。

可能であれば亡くなった人が死亡した日から(先順位の相続人がいる場合は、先順位の相続人が相続放棄したときから)3ヵ月以内に手続した方が無難です。

先順位の相続人が全員放棄すると

亡くなった人の子が全員相続放棄すると、今度は、亡くなった人の直系尊属(親など)が相続人となります。

そのため、直系尊属(親など)もいらない不動産を相続したくないという場合は、直系尊属(親など)も相続放棄の手続をする必要があります。

直系尊属(親など)が全員相続放棄したり、亡くなっている場合は、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となります。

兄弟姉妹もいらない不動産を相続したくないということでしたら、相続放棄をする必要があります。

相続人全員が相続放棄すると

相続人全員が相続放棄しても、相続財産管理人を選任しないと不動産の管理義務が残ります。

民法940条で、相続放棄をした者は、次の人が相続財産の管理を始めることができるまで、財産の管理を続けなければならないとされています。

民法 第940条  
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

相続人全員が相続放棄をしてしまうと、管理を引き継げる人がいなくなってしまいます。

その場合、家庭裁判所で相続財産管理人という人を選んでもらって、その人に管理を引き継ぐという話になります。

しかし、相続財産管理人の選任を申し立てるときに、その人の報酬や費用をまかなうために、申し立てをした人にお金を裁判所に予納させるケースがあります。

亡くなった人に預貯金があれば予納は要求されないかもしれませんが、金銭的な価値のある遺産がない場合、けっこうな額を予納するように裁判所に指示されるかもしれません。

埼玉ですと、100万円ちょっとぐらいを予納するように言われることもあります(予納金額は各地の裁判所によっても違いますし、事案によっても違うようです)。

不動産を手放すのは難しい

以上、説明してきたように不動産を手放すのは非常に難しいです。

なので、売れる可能性がある不動産については早めに行動を起こした方が良いかもしれません。

なお、注意しなければならないのは原野商法の二次被害です。

「あなたのいらない土地を高値で買い取る」などと電話や訪問で勧誘があるそうです。

ただ、実際には、より高値の不動産(やはり原野)を買う契約と抱き合わせだったり、測量・手続費用と称してお金を請求してくることもある様です。

参考サイト

原野商法の二次被害に関する相談は全国の消費センターで行っているようですので、必要に応じて相談してください。消費センターの電話番号は 188 です。


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