スムーズな資産承継
通常、相続の場合は、遺言書があったとしても遺言執行者が遺言執行をするのにある程度の期間がかかります。
預貯金や不動産の相続手続が完了するまで、一定の時間がかかることになります。
この点、家族信託を組んでおいて、受益者が亡くなったら次の受益者に受益権が移る設計にすれば、財産の管理は相続開始後も受託者がそのまま担いますので、相続手続の空白期間を無くせます。
信託財産の独立性
通常の遺言ですと、新しい遺言書を作ったら、後に作った方が優先します。
つまり、財産を承継する人にしてみれば、自分が後継者だと思って頑張ってきたのに、いつの間にか遺言書を作り直されて違う人が財産を相続するという可能性もある訳です。
家族信託を活用すれば、信託契約書の中に財産の承継者を指定しておいて、この承継者の変更は委託者と受託者が合意しないとできないという様に設定することも可能です。
中小企業のオーナー(株主)が、自社株式を後継者に信託して、オーナーが亡くなったら後継者が財産を承継する設計にしたとします。
このとき、オーナーと後継者が合意しなければ、財産の承継者を変更することができないという様にすることもできます。
後継者の地位が安定しますので、後継者としても安心できるでしょう。
次に成年後見制度の問題を述べます。
通常、認知症になって判断能力がなくなると成年後見人が財産管理をします。
成年後見人は財産を処分する権限がありますから、不動産を売られてしまったり、預金の構成を変えられたりする可能性もあります。
例えば、A銀行の預金は長男に、B銀行の預金は二男に相続させる旨の遺言書を作っていたとしても、成年後見人がA銀行の預金をB銀行に移してしまうという可能性もあるのです。
そうすると、相続が開始したときに、長男が相続するA銀行の預金は空になっているということもあり得るのです。
事前に家族信託を組んでおけば、信託した財産については受託者が管理しますから、成年後見人に財産構成を変えられる心配もなくなります。
19.活用事例 高齢の資産家が相続税対策をしたい
家族信託 解説コラム メニュー
- 01.認知症になると成年後見人が財産管理をする
- 02.成年後見制度のデメリット(相続税対策はできない)
- 03.信託銀行じゃなくても受託者になれる?
- 04.家族信託の仕組み
- 05.信託すると所有権は権利と名義に分かれる
- 06.信託とは財産管理の一手法
- 07.信託不動産の登記簿の記載例
- 08.民事信託・家族信託・福祉型信託・商事信託とは
- 09.家族信託の組み方
- 10.遺言による信託の活用例
- 11.自己信託の活用例
- 12.信託設定時の課税について
- 13.家族信託のイメージと機能
- 14.家族信託のメリット 後見制度に代わる柔軟な財産管理
- 15.信託活用のメリット 何代にも渡って承継者を指定できる1
- 16.信託活用のメリット 何代にも渡って承継者を指定できる2
- 17.信託活用のメリット 不動産共有化対策
- 18.信託活用のメリット スムーズな資産承継 遺言書き換えの防止
- 19.活用事例 高齢の資産家が相続税対策をしたい
- 20.活用事例 親の使わなくなった一軒家を売却したい
- 21.活用事例 共有不動産のトラブル回避
- 22.活用事例 障がいを持つ一人っ子に資産を残す
- 23.活用事例 会社経営者(株主)の認知症・相続対策
- 24.まとめ
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