認知症で空き家の売却に困らないように準備する方法

相続・認知症で実家を空き家にしない方法の続きです。


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空き家の発生するきっかけ

空き家が発生するきっかけと言うのは主に3つに分けられると思います。

まずは、引っ越しです。

転勤などで引っ越さなければならなくなったようなケースです。

ただ、引っ越しのケースでは空き家となった家は売るなり貸すなりという手続が直ぐに取られることが多く、それほど問題となることはないでしょう。


空き家となり問題が生じやすいのは、高齢者の転居と相続のケースです。

まず、高齢者の転居を考えてみましょう。

一人暮らしの高齢者が介護施設に入所したり、子どもと同居することになったりすると、住んでいた家が空き家となります。

その後、高齢者が認知症になり判断能力がなくなってしまうと、不動産を売ろうにも売ることができなくなってしまうのです。

誰も住んでいないのに、固定資産税や草刈りなどの維持費を払い続けなくてはならなくなるかもしれません。


また、家の所有者が亡くなったときも空き家で困るケースが出てきます。

一人暮らしの人が亡くなって相続が起こると、相続手続が上手くいかずに空き家を売れないかもしれません。

相続財産の分け方について相続人の話がまとまらなかったりするケースです。

相続人の中に認知症や行方不明の人がいるケースでも問題が生じます。

何代も相続を重ねて、相続人がネズミ算式に増えてしまい、意思統一ができずに不動産を売れないという可能性もあります。

その他、相続人全員が相続放棄をしてしまっても、空き家を管理する人がいなくなって困ってしまうでしょう。

では、認知症のケースから詳しく見ていきましょう。


認知症になったら財産の管理・処分は誰がする?

認知症になったら財産の管理処分は誰がする?

不動産を持っている人が認知症になって判断能力が無くなったら、財産の管理や処分は誰がするのでしょうか?

判断能力が無くなる前に何も準備していなかった場合は、法定後見人(成年後見人)が財産の管理を行います。

判断能力が無くなる前に、ご本人が任意後見契約を結んでいれば、任意後見人が財産管理をします。

判断能力が無くなる前に、ご本人がご家族と信託契約を結び、財産をご家族に信託していれば、財産を託されたご家族が管理を行います。

これを家族信託と言います。


成年後見(法定後見)の問題

成年後見の問題

後見人の職務は、ご本人のためにご本人の財産を守ることです。

後見人が就いたからと言って、認知症になったご本人の財産を自由に処分できるわけではありません。

ご本人が住んでいたり過去に住んでいた居住用不動産は、家庭裁判所の許可がないと売ることはできません。

そして、家庭裁判所は、ご本人の預貯金では生活費・介護費が足りないなどの合理的な理由がないと不動産売却の許可を出しません。

預貯金が十分にあれば、不動産を売る必要がないでしょうと言われてしまうのです。

したがって、ご本人が施設等に移って家に誰も住んでいなくても、固定資産税や維持管理費を払い続けなくてはならないのです。


法定後見のデメリット

法定後見のデメリットをまとめてみましょう。

まず、法定後見では相続税対策はできません。

相続税対策はご本人のためのものではなく、将来の相続人のためのものですから、成年後見制度にはなじまないものです。

また、資産の積極的な運用や活用もできません。

法定後見の場合、後見人を誰にするのかを最終的に決めるのは家庭裁判所です。

したがって、ご家族が後見人になれないこともあり、司法書士や弁護士を家庭裁判所が後見人として選んでしまうかもしれません。

司法書士や弁護士などの職業後見人が選ばれてしまうと、継続的に後見人報酬が発生します。

後見人の報酬目安ですが、さいたま家庭裁判所では流動資産の額に応じて月2万円から6万円であるとしています。

預貯金などの流動資産が1000万円から5000万円ぐらいですと、月3~4万円ぐらいの様です。

なお、ご家族が後見人になれた場合でも、後見人として定期的に家庭裁判所に報告書を提出する必要があります。

基本的には年1回の報告となります。


任意後見とは

任意後見とは

任意後見とは、ご本人が元気なうちに将来、後見人になってもらいたい人と任意後見契約を結ぶ制度です。

この任意後見契約は公証人の作る公正証書で行います。

契約書の中に、将来、任意後見人にやってもらうことを記載しておくのです。

例えば、預貯金の管理をしてもらうだとか、不動産の管理・処分の権限を与えるだとか言った感じです。

そして、ご本人の判断能力が低下したら、生活、療養看護、財産管理に関する事務を任意後見人にやってもらいます。


なお、ご本人の判断能力が低下したら、自動的に任意後見人になる訳ではなく、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てなければなりません。

任意後見監督人という人が就いたら、任意後見人として活動ができるということになります。

任意後見監督人は任意後見人を監督したり、任意後見人から報告を受けたりします。

そして、任意後見監督人は家庭裁判所に報告します。

場合によっては、家庭裁判所が任意後見監督人に調査を命じることもあります。

任意後見監督人が任意後見人が後見人として相応しくないから解任してほしいと家庭裁判所に請求すると、家庭裁判所は任意後見人を解任することもあります。

従いまして、任意後見人になったから全く自由に活動ができる訳ではなく、任意後見監督人の監督もありますし、間接的に家庭裁判所の監督もある訳です。


任意後見なら

法定後見と違って、任意後見は後見人を自分で選べます。

ご本人が元気なうちに将来、任意後見人になってもらう人と任意後見契約を交わす訳です。

そして、法定後見では居住用不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要だと申し上げましたが、任意後見の場合は原則として家庭裁判所の許可がなしで居住用不動産についても売却が可能です。

居住用不動産の売却も家庭裁判所の許可がいらないという点が法定後見と異なります。

ただ、実務上は、不動産を売却するにあたっては、ご本人の意向を十分に確認し、任意後見監督人と相談すべきでしょう。


任意後見のデメリット

任意後見のデメリット

任意後見の大きなデメリットとしては、ご本人の判断能力が低下して任意後見を発動する場合、必ず任意後見監督人がつくという点が挙げられます。

任意後見監督人がつけば継続的にその報酬が発生することになります。

家庭裁判所が出している後見監督人の報酬目安は月額1~3万円です。

仮に中間の2万円だったとしても、年24万円が任意後見監督人の報酬として毎年かかるということになります。


また、先ほども申し上げましたが、任意後見監督人の監督と、家庭裁判所の間接的な関与がありますので、任意後見人が全く自由に財産管理を行えるという訳ではありません。


家族信託

家族信託

法定後見、任意後見につづき、認知症後の財産管理方法として家族信託(民事信託)を紹介します。

図をみながら説明します。

図の左側にいる人がお父さん、右側にいる人が息子さんとします。

左側に二人描いてありますが、これは同一人物です。両方ともお父さんですね。

お父さんが元気なうちに息子さんと信託契約を結び、自宅不動産を息子さんに信託します。

信託契約書の中で、息子さんに管理・処分権限を与えておきます。

財産を託したお父さんのことを委託者と言います。

また、財産を託された息子さんの事は受託者と言います。

信託することによって、不動産は形式的には息子さんの名義になります。

しかし、実質的には信託財産は、信託された財産からの利益を受ける受益者のものです。

利益を受ける人・受益者は、このケースではお父さんです。

お父さんは受益者として信託された自宅不動産に住み続けることができます。

そして、将来、お父さんが認知症になって施設に移り、自宅不動産が空き家となった場合、受託者である息子さんの権限で不動産を売ることができるのです。

お父さんが認知症になっても後見人をつけずに、息子さんが不動産を売却できるのが家族信託の大きな特徴です。

なお、売却代金は息子さんのものになる訳ではありません。

信託財産である自宅不動産を売って得たお金は信託財産ですから、息子さんが受託者として管理していき受益者であるお父さんのために使うべきお金です。

このお金で受益者であるお父さんの生活費や介護費などをまかなうということになります。


ところで、委託者から受託者に不動産の名義を移してしまって、贈与税や不動産取得税はかからないだろうかと心配な方もいらっしゃるかもしれません。

元々財産を持っていた委託者と、信託財産の実質的な所有者である受益者が同一人物であれば信託を組んでも贈与税や不動産取得税は発生しません。

このケースでは、委託者も受益者もお父さんですから、贈与税・不動産取得税は課税されません。


自宅を信託


家族信託のメリット

家族信託のメリット

家族信託のメリットとしては、親御さんが認知症になっても、お子さんが受託者として自宅不動産を売却できるという点が挙げられます。

法定後見では、自宅不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要ですから、売却できるか分かりませんが、家族信託なら大丈夫ということになります。


任意後見と家族信託を比べてみます。

任意後見の最大のデメリットは任意後見監督人が必ずつきますので、任意後見監督人の報酬が継続的に発生するということです。

この点、家族信託はご本人が希望すれば、信託監督人というのをつけることもできますが、希望しなければ信託監督人をつける必要はありません。

従いまして、家族信託を設定する際の初期費用は高額となってしまうというデメリットがありますが、任意後見監督人の継続的な報酬を考えると、最終的には家族信託の方が安いというケースが多いのではないでしょうか。


最後に、再び法定後見と比べますが、法定後見の場合、後見人になる人を最終的に決めるのは家庭裁判所です。

ご家族が後見人になれる保証はありません。

この点、家族信託はご本人が元気なうちに財産を託す人と信託契約を結びますから、受託者をご本人が決められるということになります。


身上監護

身上監護

ただ、家族信託ではできないこともあります。

家族信託には身上監護の機能がありません。

身上監護とは、身の回りの契約や手続のことです。

例えば、介護サービス契約を締結したり、施設入所契約を締結したり、医療に関する締結をしたりすることです。

ご本人が認知症でこれらの契約ができないと成年後見人をつけるように言われるかもしれません。

しかし、親御さんが認知症になった場合、これらの契約はご家族が行って通ってしまうことが多いのではないかと思います。

そうであれば、家族信託だけで財産管理を行っていけば住むのですが、上記の契約が必要だから後見人をつけるように言われてしまうと、家族信託と後見制度を併用しなければならないことも出てくるかもしれません。

家族信託を使えば、絶対に後見人をつけなくても良いのかと言うと、そうとも言い切れないのでご注意ください。


認知症で空き家にしないためには

認知症で空き家を発生させない

認知症で空き家を発生させないための予防方法ということでご説明してきました。

まとめてみますと、まず、法定後見では自宅不動産を売却できるかどうか分かりません。

自宅不動産を売却できるようにするには、元気なうちに任意後見契約か家族信託を組んでおくということになります。

なお、家族信託について詳しくは、家族信託専用サイトをご覧ください。


次のページからは、相続で空き家を発生させないための予防方法について解説していきます。

03.相続で空き家の売却に困らないように準備する方法


相続・認知症で実家を空き家にしない方法 記事一覧

  1. 相続・認知症で実家を空き家にしない方法
  2. 認知症で空き家の売却に困らないように準備する方法
  3. 相続で空き家の売却に困らないように準備する方法

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