質問

受益者代理人とはなんですか?


回答

受益者代理人は、代理する受益者のために、その受益者の権利に関する行為をする権限を持っている人のことです。

「受益者の権利」とは、「信託に関する意思決定をする権利」や「受託者を監督する権利」です。

受益者代理人が、受益者に代わって、これらの権利を行使します。

信託法 第139条1項 
受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(第四十二条の規定による責任の免除に係るものを除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。


家族信託を運用していくにあたって、状況の変化に応じて、信託契約を変更する必要がでてくることもあるかもしれません。

「受益者と受託者の合意により信託契約を変更できる」と定めておいても、受益者の判断能力が無くなってしまった場合、信託契約の変更ができなくなってしまいます。

受益者代理人を選任して、「受益者(受益者代理人がいるときは受益者代理人)と受託者の合意により信託契約を変更できる」とした条項にしておけば、受益者の判断能力が無くなったとしても、信託契約の変更ができます。


また、「受益者の請求に基づいて、受託者が生活費を給付する」という条項があった場合も、受益者が請求できない状況になる可能性もありますから、受益者代理人を選任しておいて、受益者代理人が請求するというスキームも考えられます。


受益者代理人を選任するには、信託行為(信託契約など)に、受益者代理人選任に関する定めをしておく必要があります。

信託監督人などの場合と異なり、裁判所の決定により選任することは認められていません。

この点は、信託スキーム設計をするに際して、注意しておかなければなりません。

信託法 第138条1項
信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。


受益者代理人が選任されている場合、代理される受益者自身は原則として、受益者としての権利を行使できなくなります。

例えば、受益者が大勢いる場合、受益者としての意思決定が困難となります。
こんなときに、受益者代理人を選任しておいて、個々の受益者に意思決定の権利行使をさせずに、受益者代理人に意思決定をさせるという使い方も考えられます。

信託法 第139条4項
受益者代理人があるときは、当該受益者代理人に代理される受益者は、第九十二条各号に掲げる権利及び信託行為において定めた権利を除き、その権利を行使することができない。

詳しくは拙著「Q&A 「家族信託」の活用」もご参照ください。


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