質問
家族信託の契約書は公正証書で作らなくてはなりませんか?
当事者の私文書で作っても大丈夫でしょうか?
回答
信託の方式は、信託契約、遺言による信託、自己信託の3つがあります。
遺言による信託の場合は、遺言の要件を満たすようですので公正証書遺言を使うことが多いと思います。
自己信託の場合は、公正証書、公証人の認証を受けた書面、確定日付ある証書などで行います。
信託契約による方法で信託を設定する場合は、必ずしも公正証書での契約書が要求されている訳ではありません。
当事者同士の私文書で信託契約書を作っても、信託法上は有効です。
しかし、信託契約書を公正証書で作った方が良い理由が3つあります。
一つは、公正証書を作る際は、公正な第三者である公証人が委託者や受託者と面談して、当事者の意思を確認します。
したがって、当事者の意思に基づいて信託契約がなされたという強い推定が働きます。
家族信託を導入する家族は、委託者が高齢のケースが多いです。
信託契約をしたときに、委託者に判断能力があり、委託者の意思に基づいて信託契約がされたという裏付けになるように、契約書は公正証書で作った方が良いのです。
二つ目は、信託契約書が紛失しても困らないようにするためです。
家族信託は長期に渡り継続していくことが予想されます。
数年、10年、20年、場合によっては数十年続くかもしれません。
私文書で作った信託契約書だと、万が一、それが紛失してしまったりしたら、どんな信託契約だったのか分からなくなってしまいます。
この点、公正証書であれば公証人は原則として20年は信託契約公正証書の原本を保存しなければなりません。
(なお、公証人法施行規則では、「保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。」とされているので場合によっては20年を超えて保存される可能性もあります。)
信託契約公正証書を作ると、委託者と受託者は公正証書の正本(原本と同じ効力のある書面)を受け取ります。
万が一、当事者が公正証書の正本を紛失したとしても、公証人が原本を保存してますので、正本の再交付を求めることができます。
このように、手元の信託契約書が無くなっても、信託契約の内容が分からなくならないように、原本が公証役場で保管される公正証書で信託契約書を作った方が良いのです。
三つ目は、信託口口座を作る場合、ほとんどの金融機関は公正証書を要求するからです。
金融機関としても委託者の判断能力や信託する意思が気になるところ、公証証書なら公証人が委託者に会って確認しているから、それをもって委託者の意思確認としているのだと思われます。
したがって、信託口口座を作るのであれば、金融機関の意向に沿って公正証書で信託契約書を作ることになります。
以上から当事務所で家族信託を組成する場合も、公正証書での契約書作成をお願いしております。
詳しくは拙著「Q&A 「家族信託」の活用」もご参照ください。
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