質問

財産管理委任契約(任意代理契約)で親の財産を管理できると聞きました?

家族信託と財産管理委任契約はどう違うのでしょうか?


回答

財産管理委任契約(任意代理契約)は、他の人に財産の管理等の事務を委任する契約です。

任意後見契約とセットで財産管理委任契約も締結するケースがあります。

任意後見はあくまで本人の判断能力が低下した後に任意後見人が本人の財産管理などをするものですから、本人の判断能力があるうちは任意後見人になる予定の人(任意後見受任者)は財産管理ができません。

そこで、本人の判断能力のあるうちは、財産管理委任契約で財産管理の事務を受任者(代理人)が行えるようにします。

財産管理委任契約は私的な契約書で結ぶこともできますが、多くは任意後見契約とセットで公正証書にて行っていると思われます。
(任意後見契約とセットの場合、初めは財産管理委任契約で財産の管理等を行い、本人の判断能力がなくなったら、任意後見契約を発動させて(任意後見監督人をつけたうえで)任意後見人として財産管理を継続するという流れになります。)


財産管理委任契約を使えば、本人の預貯金や不動産の管理処分を受任者が行えるから家族信託を使う必要はないのではないかと思われるかもしれません。


しかし、財産管理委任契約は万能ではありません。

例えば、財産管理委任契約を結んでいたからといって、本人の預貯金の代理人として金融機関が扱ってくれるのかどうかは金融機関次第になってしまいます。

古いデータになりますが、2006年に成年後見センター・リーガルサポートが金融機関に対して行ったアンケートでは、財産管理委任契約(任意代理契約)に基づく代理人による銀行取引を認めていると回答した金融機関は31%です。

その31%の金融機関のうちの45%が、「必ず本人に会って確認する」か「原則として本人に会って確認する」と回答しているので、契約書があるだけでは代理人とは認めず、本人に会って確認を取っているようです。

古いデータですので、現在は取り扱いが変わっている金融機関もあるかもしれませんが、財産管理委任契約を結んでも代理人として銀行取引ができない金融機関も存在すると考えておいた方が良いでしょう。


この点、家族信託ならお金を信託して、信託口口座に入金された後は、その口座の管理は受託者ができます。

財産管理委任契約より優れている点と言えます。


それでは、不動産の売買の観点から財産管理委任契約を考えてみます。

財産管理委任契約にて受任者(代理人)に本人の不動産の売却権限を与えていたとしても、売買の登記を担当する司法書士は不動産の所有者本人に売却意思の確認をするでしょう。

したがいまして、財産管理委任契約を結んでも、受任者(代理人)だけで不動産を売却できることにはなりません。


この点においても、家族信託であれば、初めに不動産を信託すれば、その後に売却するときは受託者のみが手続をすれば良いのです。

売買の登記に際して、委託者の本人確認や売却意思の確認は必要ありません。


以上をまとめると、財産管理委任契約は受任者(代理人)だけで預貯金の管理や不動産の売却ができるとは限らないのに対し、家族信託なら受託者が単独で財産の管理・処分ができるということになります。

詳しくは拙著「Q&A 「家族信託」の活用」もご参照ください。


家族信託 よくある質問

  1. 家族信託とは何か?
  2. 家族信託のメリットは何ですか?
  3. 成年後見制度では相続税対策ができないのですか?
  4. 家族信託と成年後見制度の違いは何ですか?
  5. 家族信託の費用はいくらぐらいかかりますか?
  6. 信託銀行の遺言信託をしてますが家族信託はできますか?
  7. 家族信託の受託者の責任や義務を教えてください
  8. 受益者連続信託を行う期間に制限はありますか?
  9. 信託契約を変更することはできますか?
  10. 受託者が亡くなった場合はどうなりますか?
  11. 受益者と受託者が同じ人になってしまった場合はどうなりますか?
  12. 受益者連続信託を行った場合、遺留分はどうなりますか?
  13. 遺言代用信託で承継者を変更できないようにすることはできますか?
  14. 信託する際の登記の登録免許税はいくらかかりますか?
  15. 受益者代理人とはなんですか?
  16. 遺言書(遺言信託)と家族信託の違いは何ですか?
  17. 家族信託を組むと不動産取得税はかかりますか?
  18. 家族信託・民事信託のデメリットは?
  19. 親の預金を認知症で凍結させない予防法
  20. 認知症で判断能力がないから成年後見人が必要であると誰が判断するのか?
  21. 土地1500万円、建物500万円、現金1500万円のときの家族信託の費用目安
  22. 土地1000万円、建物500万円、現金1000万円のときの家族信託の費用目安
  23. 土地2000万円、建物500万円、現金2500万円のときの家族信託の費用目安
  24. 家族信託と財産管理委任契約(任意代理契約)はどう違う?
  25. 家族信託の受託者になれる人の範囲は?
  26. 家族信託の契約書は公正証書で作る?私文書でも大丈夫?
  27. 空き家対策に家族信託を活用する方法はありますか?
  28. 損益通算の禁止規定とは何ですか?
  29. 家族信託と遺言書はどちらが優先しますか?
  30. 年金受給権を家族信託できますか?
  31. 受託者の使い込みが心配です。どうすれば良いでしょうか?
  32. 信託口口座についてペイオフ対策は必要ですか?
  33. 家族信託の手続きは自分でできますか?
  34. 家族信託した不動産を売却するときはどんな登記をしますか?
  35. 信託終了後、受託者でもある帰属権利者に所有権移転登記する際の登録免許税は?
  36. 家族信託の必要書類は?
  37. 家族信託で親の生活費に困らないようにするには
  38. アパートオーナー(賃貸経営者)の認知症対策に家族信託を活用するには
  39. 家族信託で認知症の配偶者に財産を相続させるには
  40. 家族信託をすると税金はどうなる?
  41. 家族信託が必要ないケースは?
  42. 任意後見制度とは?
  43. 家族信託を始めるタイミングは?
  44. 士業などに信託監督人を頼むのは必須ですか?
  45. 家族信託の契約書のサンプルを見せてください
  46. 家族信託の受益権は遺産分割協議や遺言の対象となりますか?

出版のお知らせ

Q&A 「家族信託」の活用 これで親子の相続・介護トラブルを防ごう!


一般の家族を対象にQ&A形式でわかりやすく解説

はじめての【家族信託】安心ガイド ~「ウチも家族信託で認知症対策!?」と思ったら読む本

家族信託を検討されている一般の方を対象に、把握しておいて頂きたいことを書籍にまとめました。



【無料】電子書籍(kindle本)

一般の方を対象に分かりやすく家族信託を解説した電子書籍(kindle本)です。



セミナー情報 お知らせメールの登録

司法書士柴崎事務所のセミナー等のご案内をメールでお知らせします 。

メールアドレスをご入力の上、ボタンをクリックしてください。



ご予約・お問い合わせ

司法書士柴崎事務所

埼玉県東松山市元宿二丁目26番地18 2階
電話 0493-31-2010

家族信託の初回面談相談を無料で承っております。
ご相談予約はお電話かフォームよりお願いします。


おすすめ記事
家族信託とは 自宅の信託 賃貸物件の信託 預金の信託 配偶者のための信託 セミナー

動画で解説 家族信託・導入の流れ 費用

無料相談受付中




主な業務対応地域
埼玉県、東松山市、川越市、坂戸市、鶴ヶ島市、ふじみ野市、富士見市、志木市、朝霞市、和光市、新座市、狭山市、所沢市、飯能市、上尾市、桶川市、北本市、鴻巣市、熊谷市、深谷市、行田市、さいたま市、蕨市、比企郡、鳩山町、嵐山町、滑川町、小川町、川島町、吉見町、ときがわ町、秩父市、東京都、板橋区、練馬区、豊島区、群馬県、栃木県など