遺言書の文例を62本、財産の種類別・家族の状況別にまとめました。各文例には、司法書士の解説と、YouTubeで解説した動画へのリンクを付けています。文例は一般的な場面を想定したものです。ご事情によっては文例どおりでは手続が進まないこともあり、結果を保証するものではありません。遺言書作成サポートも承っております。
司法書士 柴崎智哉(東松山)
『家族が困らない遺言書の書き方』(ナツメ社)著者
開業20年超・YouTube登録者4万人。相続登記・預貯金の相続手続を日常の業務とする司法書士が、実務の経験をもとに解説しています。
著書をAmazonで見る →この文例集の使い方
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基本の形:遺言書全体の見本(全財産を1人に・公正証書の全文・財産目録)
遺言書の文例:全財産を妻に相続させる
遺言書
1.遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
令和○年○月○日
埼玉県東松山市○○町○丁目○番地○
遺言者 川越甲太郎 ㊞
いちばん基本の、手書きの遺言書(自筆証書遺言)です。「一切の財産を」と書けば、不動産や預貯金を一つずつ挙げる必要はありません。相続人は「妻」という続柄と氏名、生年月日で特定し、相続人に渡すときは「相続させる」と書きます。
全文、日付、氏名を手書きしてハンコを押してください。
遺言書の文例:全財産を配偶者に相続させる(遺言執行者つき)
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記妻川越松子を指定する。
全財産を配偶者に渡し、その配偶者を遺言執行者(遺言の内容を実行する人)にも指定する文例です。
相続人に相続させる旨の遺言書であれば、不動産や預貯金の相続手続はその相続人が単独でできます。ただし、金融機関によっては遺言執行者がいない場合は、遺言者の相続人全員の実印の押印と印鑑証明書を要求するところが稀にあります。対策として、遺言書で遺言執行者を指定する文例です。遺言執行者には、遺産を受け取る相続人自身を指定することもできます。
遺言書の文例:公正証書遺言の全文
令和○年第○○号
遺言公正証書
本職は遺言者川越甲太郎の嘱託により、後記証人の立会いのもと、次のとおり遺言者の口述を筆記して、この証書を作成する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(1)所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150・00㎡
(2)所 在 東松山市○○○○ ○番地○
家屋番号 ○番○
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 60・00㎡
2階 60・00㎡
第2条 遺言者の死亡以前に前記妻川越松子が死亡していた場合は、遺言者は、第1条で前記妻川越松子に相続させるとした財産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。ただし、遺言者の死亡以前に前記妻川越松子及び前記長男川越一郎の両名が死亡していた場合は、遺言者は、第1条で前記妻川越松子に相続させるとした財産を、遺言者の孫(前記長男川越一郎の長男)川越夏郎(平成○年○月○日生)に相続させる。
第3条 遺言者は、遺言者の有する下記金融機関に存在する預金を前記長男川越一郎に相続させる。
記
うさぎ銀行
第4条 遺言者の死亡以前に前記長男川越一郎が死亡していた場合は、遺言者は、第3条で前記長男川越一郎に相続させるとした財産を、前記孫川越夏郎に相続させる。
第5条 遺言者は、遺言者の有する下記金融機関に存在する預金を遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
ひよこ銀行
第6条 遺言者の死亡以前に前記長女坂戸竹子が死亡していた場合は、遺言者は、第5条で前記長女坂戸竹子に相続させるとした財産を、遺言者の孫(前記長女坂戸竹子の長男)坂戸七雄(平成○年○月○日生)に相続させる。
第7条 遺言者は、前各条に記載する財産を除く遺言者の有する手元現金、動産その他一切の財産を前記妻川越松子に相続させる。
第8条 遺言者の死亡以前に前記妻川越松子が死亡していた場合は、遺言者は、第7条で前記妻川越松子に相続させるとした財産を、前記長男川越一郎に相続させる。ただし、遺言者の死亡以前に前記妻川越松子及び前記長男川越一郎の両名が死亡していた場合は、遺言者は、第7条で前記妻川越松子に相続させるとした財産を、前記孫川越夏郎に相続させる。
第9条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、前記長男川越一郎を指定する。ただし、遺言者の死亡以前に前記長男川越一郎が死亡していた場合は、遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、前記孫川越夏郎を指定する。
第10条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長男川越一郎を指定する。ただし、前記長男川越一郎が死亡した場合または前記長男川越一郎が遺言執行者に就職しなかった場合は、遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記孫川越夏郎を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
3 遺言執行者は、この遺言の執行に関し、第三者にその任務を行わせることができる。
(以下略)
財産ごとに渡す人を変えるような、少し複雑な内容に向く公正証書遺言の全文例です。手書きするのは署名(最近は、パソコン画面にタッチペンで名前を書く電子サインが多い)だけで、文面は公証人が作ります。
公証役場に行けばその場で作れると思われがちですが、事前に書類を集めたり、公証人と打ち合わせしたりして準備します。司法書士にサポートを依頼することもできます。相談から完成まで1〜3か月が目安です。
遺言書の文例:自筆証書遺言に財産目録を付ける
遺言書
1.遺言者は、遺言者の有する別紙1記載の不動産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
2.遺言者は、遺言者の有する別紙2記載の不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
3.遺言者は、遺言者の有する別紙3記載の預貯金を、前記川越一郎に相続させる。
4.遺言者は、上記以外の遺言者の有する財産全部を前記川越松子に相続させる。
5.遺言者は、本遺言の遺言執行者として前記川越一郎を指定する。
令和○年○月○日
埼玉県東松山市○○町○丁目○番地○
遺言者 川越甲太郎㊞
手書きの遺言書(自筆証書遺言)の本文に、パソコンで作った財産目録を別紙として付ける文例です。本文・日付・氏名は手書きが必要ですが、目録は手書きでなくてかまいません。登記事項証明書や通帳のコピーを別紙にする方法もあります。
注意は目録の署名とハンコです。目録の全ページ(両面に書いてあれば両面)に、遺言者の署名と押印が要ります。目録なら全部印刷でよいと思われがちですが、署名と押印だけは手で行います。ハンコの廃止は施行前なので、今はまだ目録にも押印が必要です。ページが複数になるときはホチキスで綴じ、継ぎ目に契印をしておくと安心です。
遺言書の文例:自筆証書遺言の財産目録(別紙の書式)
別紙1
目録
所 在 東松山市○町○丁目
地 番 ○番○
地 目 宅 地
地 積 ○○・○○㎡
所 在 東松山市○町○丁目 ○番地○
家屋番号 ○番○
種 類 居 宅
構 造 木造スレート葺2階建
床面積 1階 ○○・○○㎡
2階 ○○・○○㎡
川越甲太郎 ㊞
遺言書の本文から「別紙1記載の不動産」のように引用する、財産目録そのものの書式です。不動産は法務局の登記事項証明書のとおりに写します。預貯金は通帳を見て、金融機関名・支店名・預金の種類・口座番号(ゆうちょ銀行は記号と番号)を書きます。
残高は書きません。書くと「その金額だけを渡す」という意味に読まれるおそれがあるからです。各ページに署名と押印が必要で、ハンコの廃止は施行前なので今はまだ必要です。
不動産の文例(土地・建物・マンション・持分・未登記・売って分ける)
失敗しやすい書き方の例:「遺言者は、自宅を、遺言者の妻川越松子に相続させる。」
「自宅」では土地か建物かも分からず、不動産を特定できないため、相続登記ができない可能性があります。下の文例のように、法務局の登記事項証明書のとおりに書きます。
遺言書の文例:全部の不動産を1人に相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する一切の不動産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
持っている不動産を全部、1人に渡すときの文例です。「遺言者の有する一切の不動産を」と書くだけで、亡くなったときに持っている不動産がすべて対象になります。遺言書を作った後に買った不動産も含まれます。
地番や家屋番号を細かく書くと、1か所の間違いで相続登記が通らないことがあります。1人に渡すなら、むしろ特定しないほうが安全です。
ただし、不動産ごとに渡す人を変えたいときには使えません。その場合は次の文例のように一つずつ特定します。
遺言書の文例:土地建物を特定して相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150・00㎡
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
所 在 東松山市○○○○ ○番地○
家屋番号 ○番○
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 60・00㎡
2階 60・00㎡
不動産ごとに渡す人を変えたいとき、土地と建物を一つずつ特定して書く文例です。
「自宅を」とだけ書くのは失敗のもとです。土地か建物かも分からず、相続登記ができない可能性があります。住民票の住所(住居表示)や、固定資産税の納税通知書の表記を写すのも同じです。登記簿の表記と違うことがあります。
法務局で登記事項証明書を取り、そのとおりに写してください。土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積です。地番が分からないときは、納税通知書や市役所の名寄帳で調べてから法務局で取ります。
遺言書の文例:マンション(敷地権の登記あり)を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(一棟の建物の表示)
所 在 東松山市○○○○ ○番地○
建物の名称 ○○マンション
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○○○ ○番○の○○
建物の名称 ○○
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造1階建
床 面 積 ○階部分 60・00㎡
(敷地権の目的である土地の表示)
土地の符号 1
所在及び地番 東松山市○○○○番○
地 目 宅地
地 積 400・00㎡
(敷地権の表示)
土地の符号 1
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 1万分の125
マンションの一室(区分建物)を渡す文例です。法務局の登記事項証明書には、一棟の建物の表示、専有部分の建物の表示、敷地権の目的である土地の表示、敷地権の表示の4つが載っています。この4つをそのまま書き写します。
「○○マンション101号室」のように通称で書けば足りると思われがちですが、登記事項証明書の表記と違うと、相続登記が通らない可能性があります。部屋番号と家屋番号は別のものです。
遺言書の文例:マンション(敷地権の登記なし)を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(1)区分建物
(一棟の建物の表示)
所 在 東松山市○○○○ ○番地○
建物の名称 ○○マンション
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○○○ ○番○の○○
建物の名称 ○○
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造1階建
床 面 積 ○階部分 60・00㎡
(2)土地
所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 400・00㎡
(持分1万分の125)
マンションには、登記事項証明書に敷地権の記載がないものがあります。その場合の文例です。建物は一棟の建物と専有部分で特定し、敷地の土地は別に書きます。
敷地の土地の登記事項証明書も取ってください。土地を共有持分で持っている場合、遺言者の持分(例:1万分の125)が載っています。所在・地番・地目・地積と、その持分を書きます。建物だけを書くと、土地の持分が遺言書から漏れてしまいます。
遺言書の文例:不動産を持分割合で相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)及び遺言者の二女熊谷梅子(昭和○年○月○日生)に3分の1ずつの持分割合で相続させる。
記
所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150・00㎡
1つの不動産を、複数の相続人の共有で渡す文例です(例:長男に3分の2、長女に3分の1)。人ごとに持分の割合を書きます。
ただし、共有にすると、相続を重ねるたびに共有者が増えます。基本的に、売るときは共有者全員の協力が必要で、連絡の取れない人がいると売れなくなります。公平に見えても、1つの不動産を共有で渡すことは慎重に考えてください。
遺言書の文例:不動産の持分を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産(その有する権利が持分であるときは持分の全部)を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150・00㎡
(遺言者の現在持分2分の1)
遺言者が不動産の持分(例:2分の1)だけを持っているときの文例です。「その有する権利が持分であるときは持分の全部」と書き、作成時の持分を「(遺言者の現在持分2分の1)」のように添えます。こう書くと、遺言書を作った後に持分が増えても、増えた分を含めて渡せます。
持分は、登記事項証明書の権利部(甲区)で確認します。
遺言書の文例:未登記建物を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
所 在 東松山市○○○○ ○番地○
家屋番号 未登記
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 60・00㎡
2階 60・00㎡
(上記建物は未登記のため、令和○年○月○日付け東松山市長○○作成の固定資産評価証明書により、家屋の所在等を特定した。)
建物を建てたのに登記をしていない(未登記の)建物を渡す文例です。登記事項証明書も家屋番号もないため、固定資産評価証明書の記載どおりに所在・種類・構造・床面積を書き、家屋番号の欄は「未登記」とします。評価証明書で特定した旨の一文も添えます。
遺言書の文例:建物に未登記の増築部分がある場合
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
所 在 東松山市○○○○ ○番地○
家屋番号 ○番○
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 60・00㎡
2階 60・00㎡
上記建物の増築部分(未登記)を含む。
新築のときは登記したものの、あとから増築した部分を登記していない建物の文例です。登記事項証明書の床面積と、固定資産評価証明書の床面積を見比べ、面積が大きく違う場合、未登記の増築部分がある可能性があります。
建物の表示の後に「上記建物の増築部分(未登記)を含む」と書き、増築部分も含めて渡すことを明記します。相続した人が後で増築の登記をするときに、手続を進めやすくなります。
遺言書の文例:不動産を遺言執行者が売って代金を分配する
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記(1)記載の不動産を、遺言執行者において換価処分させ、その換価金から不動産の換価処分にかかった費用を控除した後の残金を、下記(2)記載の相続人に対し、それぞれに記載する割合で相続させる。
記
(1)不動産
①所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150・00㎡
②所 在 東松山市○○○○ ○番地○
家屋番号 ○番○
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 60・00㎡
2階 60・00㎡
(2)相続人及び割合
①遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)3分の1
②遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)3分の1
③遺言者の二女熊谷梅子(昭和○年○月○日生)3分の1
(中略)
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長男川越一郎を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
「不動産は売って、お金を子どもたちで分けてほしい」ときの文例です(清算型といいます)。遺言執行者に不動産を売却させ、売却にかかった費用を引いた残りを、決めた割合で渡します。
共有で渡す方法だと、売買契約や決済に共有者全員が関わります。この文例なら、遺言執行者が売買契約を結び、買主とともに登記を行います。ただし、売買の登記をする前に、一度、法定相続人全員の名義で相続登記を入れることになります。
遺言書の文例:相続人以外(お世話になった人・子の嫁や婿・配偶者の連れ子)に不動産を遺贈する
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、高坂陸雄(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に遺贈する。
記
所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150・00㎡
(中略)
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記高坂陸雄を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
相続人ではない人に、特定の不動産を渡す文例です。相続人以外に渡すときは「相続させる」ではなく「遺贈する」と書き、相手(受遺者)は氏名・生年月日・住所で特定します。不動産は登記事項証明書のとおりに書きます。
相続人でない人が特定の不動産の遺贈を受けると、不動産取得税がかかります。また、遺言執行者がいない場合、遺贈の登記には遺言者の相続人全員の協力が要るため、遺言書で遺言執行者を指定しておきます。
遺言書の文例:配偶者居住権を遺贈する
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。ただし、下記建物には次条の配偶者居住権が設定されている。
(中略)
第○条 遺言者は、前条に記載する建物の配偶者居住権を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に遺贈する。
家の所有権は長男に、住み続ける権利(配偶者居住権)は妻に分ける文例です。配偶者居住権は「相続させる」ではなく「遺贈する」と書きます。妻が相続開始のときにその家に住んでいることが条件です。
登記は妻と建物の所有者が共同で行うため、協力が得られない場合に備えて妻を遺言執行者に指定しておきます。便利な反面、この権利が付いた家は売りにくく、妻が施設に移っても権利は消えません。放棄すると贈与税がかかる可能性もあります。
遺言書の文例:土地のことだけ遺言書に記載する
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150・00㎡
親の土地に家を建てた子(例:長男)に、その土地を確実に渡す文例です。遺言書がないと、土地は相続人全員の話し合いで決まり、まとまらなければ長男が相続できないおそれがあります。
遺言書に土地のことだけを書くことも可能です。遺言書に書いてない他の財産は、相続開始後の話し合いで分けます。ただし、遺言で渡した土地は長男の相続分から差し引かれるため、土地の評価が高いと、他の財産で長男の取り分がなくなることがあります。
遺言書の文例:相続させた土地の持戻し免除の意思表示をする
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
所 在 東松山市○○○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150・00㎡
第2条 遺言者の相続財産について遺産分割をする場合、この遺言による相続財産の持戻しを免除し、前記長男川越一郎の相続分から前条に記載する財産の価額を控除しないものとする。
土地を長男に渡したうえで、その土地の価額を長男の相続分から差し引かないように定める文例です(持戻しの免除)。
たとえば土地1,000万円・預貯金2,000万円を子3人で分ける場合、免除をしないと、長男は土地で相続分を満たしたとされ、預貯金を受け取れないことがあります。免除をすれば、土地を除いた預貯金を3人で分けるので、長男も受け取れます。
遺言書の文例:不動産の漏れに備える(「下記の不動産を含む一切の不動産」)
第○条 遺言者は、下記の不動産を含む遺言者の有する一切の不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(中略)
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記預貯金を、長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(中略)
第○条 遺言者は、前各条に記載する財産を除く遺言者の有する手元現金、動産その他一切の財産を、前記長女坂戸竹子に相続させる。
不動産を渡す相手が1人のときの、書き漏れに備える書き方です。物件をいくつか書いたうえで「下記の不動産を含む遺言者の有する一切の不動産を」とします。近所の人と共有している私道など、書き漏らした物件があっても、同じ人に渡せます。
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遺言書作成サポートの内容と費用を見る預貯金・金融資産の文例
遺言書の文例:全部の預貯金を1人に相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する一切の預貯金を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
預貯金を全部1人に渡すときの文例です。「一切の預貯金を」と書けば、亡くなったときにあるすべての預貯金が対象で、遺言書を作った後に開いた口座も含まれます。口座番号などを細かく書く必要はありません。
ただし、株式・投資信託・国債は預貯金ではありません。これらも同じ人に渡すなら、「預貯金その他一切の金融資産」と書きます。
遺言書の文例:口座番号で特定して預貯金を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記預貯金を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(1)うさぎ銀行 ○○支店 普通預金
口座番号XXXXXXX
(2)ゆうちょ銀行 通常貯金
記号番号XXXXX-XXXXXXXX
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記預貯金を、遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(1)うさぎ銀行 ○○支店 定期預金
口座番号YYYYYYY
(2)ゆうちょ銀行 定期貯金
記号番号YYYYY-YYYYYYYY
口座ごとに渡す人を変えたいときの文例です。金融機関名・支店名・預金の種類・口座番号を通帳のとおりに書きます(ゆうちょ銀行は記号と番号)。
残高は書きません。書くと、その金額だけを渡す意味に読まれるおそれがあります。なお、口座番号で特定すると、定期預金が満期で普通預金に払い戻されると定期の口座は空になり、定期の口座を受け取る予定だった人は何も受け取れません。
遺言書の文例:金融機関名で特定して預貯金を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記金融機関に存在する預金を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(1)うさぎ銀行
(2)ひよこ銀行
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記金融機関に存在する預貯金を、遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(1)かえる銀行
(2)ゆうちょ銀行
「うさぎ銀行にある預貯金は長男に」のように、金融機関ごとに渡す人を決める文例です。口座番号を書かないので、その金融機関にある預貯金はすべて対象になります。定期預金が満期で普通預金に払い戻されても、遺言書を作った後に口座を開いても同じ金融機関であれば対象です。
「預金」と「貯金」は金融機関によって呼び方が違います。両方を含めたいときは「預貯金」と書きます。
遺言書の文例:預貯金以外の金融資産も相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記金融機関に存在する預貯金、出資金、投資信託受益権、株式、国債その他一切の金融資産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(1)うさぎ銀行
(2)パンダ信用金庫
(3)タヌキ証券
(4)その他一切の金融機関
金融機関ごとに、預貯金だけでなく株式・投資信託・国債・出資金まで含めて渡す文例です。「預貯金、出資金、投資信託受益権、株式、国債その他一切の金融資産」と書き、金融機関名を並べます。信用金庫や農協には出資金があり、銀行でも投資信託や国債を扱っていることがあります。
最後に「その他一切の金融機関」を置くと、挙げ漏れた金融機関にある資産も対象になります。入れるかどうかは、渡し方の事情で決めてください。
遺言書の文例:預貯金その他一切の金融資産を1人に相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する預貯金その他一切の金融資産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
預貯金だけでなく、株式・投資信託・国債まで、金融資産を全部1人に渡すときの文例です。「預貯金その他一切の金融資産を」と書けば、銘柄や口座を挙げなくても、亡くなったときにあるものがすべて対象になります。
遺言書の文例:遺言執行者が預貯金を払い戻して分配する
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記(1)記載の金融機関に存在する預貯金その他一切の金融資産を、遺言執行者において換価処分させ、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済し、かつ、遺言者の葬儀・埋葬費用、遺言執行の費用を控除した後の残金を、下記(2)記載の相続人に対し、それぞれに記載する割合で相続させる。
記
(1)金融機関
①うさぎ銀行
②ゆうちょ銀行
③その他一切の金融機関
(2)相続人及び割合
①遺言者の妻川越松子 (昭和○年○月○日生)2分の1
②遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)4分の1
③遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)4分の1
(中略)
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長男川越一郎を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
預貯金を解約し、割合で分けたいとき(例:妻2分の1、長男と長女が4分の1ずつ)の文例です。遺言執行者が払い戻し、借金・葬儀と埋葬の費用・遺言執行の費用を引いた残りを分けます。金融機関の最後に「その他一切の金融機関」を置くと、挙げ漏れた口座も対象になります。
遺言執行者には相続人を指定することもできます。ただし、遺言執行者には相続人への通知や財産目録の作成などの義務があります。
遺言書の文例:債務等を控除しない場合
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記(1)記載の金融機関に存在する預貯金その他一切の金融資産を、遺言執行者において換価処分させ、その換価金を、下記(2)記載の相続人に対し、それぞれに記載する割合で相続させる。
記
(1)金融機関
①うさぎ銀行
②ゆうちょ銀行
③その他一切の金融機関
(2)相続人及び割合
①遺言者の妻川越松子 (昭和○年○月○日生)2分の1
②遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)4分の1
③遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)4分の1
一つ前の文例と同じ分け方で、借金や葬儀費用を引かず、払い戻したお金をそのまま割合で分ける文例です。遺言執行者が債務の支払いまで担当しないため、文面は単純になります。
ただし、借金や葬儀費用はこの条項では処理されません。
遺言書の文例:相続人以外(お世話になった人・子の嫁や婿・配偶者の連れ子)に預貯金を遺贈する
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記預貯金を、高坂陸雄(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に遺贈する。
記
(1)うさぎ銀行 ○○支店 普通預金
口座番号XXXXXXX
(2)ゆうちょ銀行 通常貯金
記号番号XXXXX-XXXXXXXX
(中略)
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記高坂陸雄を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
相続人ではない人に預貯金を渡す文例です。「遺贈する」と書き、相手(受遺者)は氏名・生年月日・住所で特定し、口座は口座番号(ゆうちょ銀行は記号と番号)で特定します。
遺贈の手続は、もらう人と遺言者の相続人全員で行うのが基本です。相続人の協力が得られないおそれがあるなら、遺言執行者を指定しておきます。そうすれば、もらう人と遺言執行者だけで手続ができます。
遺言書の文例:清算型換価分配(基本形)
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記(1)記載の金融機関に存在する預貯金その他の金融資産を、遺言執行者において換価処分させ、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済し、かつ、遺言者の葬儀・埋葬費用、遺言執行の費用を控除した後の残金を、下記(2)記載の相続人に対し、均等の割合で相続させる。ただし、下記の相続人のうち遺言者の死亡以前に死亡した者がいた場合は、その者を除く下記の相続人に均等の割合で相続させる。
記
(1)金融機関
①うさぎ銀行
②ゆうちょ銀行
③その他の金融機関
(2)相続人
①遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)
②遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)
預貯金などを遺言執行者が現金にし、借金・葬儀と埋葬の費用・遺言執行の費用を引いた残りを、相続人に均等に分ける基本の文例です。金融機関の最後に「その他の金融機関」を置くと、挙げ漏れた口座も拾えます。
ただし書きで、相続人のうち遺言者の死亡以前に亡くなった人がいれば、その人を除いて分けると定めています。割合を変えたいときは、相続人の欄に「○分の○」を書き足します。
株式・投資信託・国債の文例
遺言書の文例:上場株式を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記株式を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
取扱金融機関名 ○○証券 東松山支店
口座番号 XXX-XXXXX
銘柄 ○○○○株式会社
銘柄コード ○○○○
数量 1000株
特定の上場株式を1人に渡す文例です。証券会社から届く取引報告書やインターネットの管理画面を見て、金融機関名・支店名・口座番号・銘柄・銘柄コード・数量を書きます。書き方が不正確だと、相続手続ができないことがあります。
数量は、売却や追加購入、株式の併合・分割で変わります。細かく書くほど、遺言書を作った後の変化に対応しにくくなります。変化が心配なら、口座ごと渡す書き方(金融機関を特定して資産すべてを渡す文例)を検討してください。
遺言書の文例:投資信託を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記投資信託受益権を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
取扱金融機関名 ○○証券 東松山支店
口座番号 XXX-XXXXX
銘柄 ○○TOPIXオープン
銘柄コード ○○○○○○○
数量 1000口
投資信託を1人に渡す文例です。上場株式と同じく、報告書やインターネットの管理画面を見て、金融機関名・口座番号・銘柄・銘柄コード・口数を書きます。
分配金を再投資する型の投資信託では、遺言書を作った後に口数が増えていることがあります。口数まで細かく書くと、増えた分が対象から外れるおそれがあります。変化が心配なときは、口座ごと渡す書き方を検討してください。
遺言書の文例:国債を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記国債を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
取扱金融機関名 タヌキ証券 東松山支店
口座番号 XXX-XXXXX
名称 個人向け国債変動・10年 第○回
銘柄コード ○○○○○-○○○○○
額面金額 1000万円
発行日 令和○年○月○日
償還日 令和○年○月○日
国債を1人に渡す文例です。金融機関名・口座番号・名称・銘柄コード・額面金額・発行日・償還日で特定します。
注意したいのは償還日です。国債は満期になると払い戻されるため、遺言者が亡くなったときには、もう口座に残っていないことがあります。その場合、渡すはずの国債はなく、払い戻されたお金が預貯金の側にあるだけになります。
遺言書の文例:金融機関を特定して、そこにある資産すべてを相続させる
第○条 遺言者は、下記金融機関の取引口座にて遺言者が保有する株式、公社債、投資信託受益権、預け金その他一切の金融資産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
取扱金融機関名 ○○証券 東松山支店
口座番号 XXX-XXXXX
証券会社などの口座を特定し、そこで持っている株式・公社債・投資信託受益権・預け金その他一切の金融資産を、まとめて1人に渡す文例です。銘柄や数量を書かないので、売買で中身が変わっても、口座に残っているものはすべて対象になります。細かく書きすぎて対象から外れる失敗を防げます。
貸金庫・生命保険・お墓・その他の財産の文例
遺言書の文例:貸金庫を開ける権限を遺言執行者に与える
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長男川越一郎を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)貸金庫の開扉、解約及び内容物の取り出し
(3)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
遺言執行者が貸金庫を開けられるようにする文例です。相続が始まると、貸金庫を開けるには相続人全員の立会いや同意書を金融機関に求められるでしょう。遺言書で遺言執行者を指定し、権限に「貸金庫の開扉、解約及び内容物の取り出し」を入れておきます。
注意は、この遺言書そのものを貸金庫に入れないことです。手書きの遺言書が1通だけ金庫の中にあると、取り出せなくなります。公正証書遺言の場合も、公証役場に謄本の再交付を請求しなければならなくなるかもしれません。
遺言書の文例:条件付きで貸金庫を開ける権限を与える
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長男川越一郎を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)遺言者の死亡時において貸金庫の賃貸借契約があった場合は、貸金庫の開扉、解約及び内容物の取り出し
(3)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
今は貸金庫を借りていないが、将来借りるかもしれない人向けの文例です。権限の欄に「遺言者の死亡時において貸金庫の賃貸借契約があった場合は、貸金庫の開扉、解約及び内容物の取り出し」と書きます。契約があれば遺言執行者が開けられ、なければこの部分は使われないだけです。
貸金庫がないからと書かずにおくと、後で借りたときに備えがありません。
遺言書の文例:死亡保険金の受取人を予備的に変更する
第○条 下記生命保険契約について、その死亡保険金受取人である前記妻川越松子が遺言者の死亡以前に死亡していた場合は、遺言者は本遺言をもって、下記生命保険契約の死亡保険金受取人を遺言者の二女熊谷梅子(昭和○年○月○日生)に変更する。
記
(1)保険者 ○○生命保険
証券番号 XXX-XXXXXXXX
(2)保険者 ○○生命保険
証券番号 XXX-XXXXXXXX
2 前項記載の条件に該当した場合、遺言執行者は、この遺言の効力が生じた後、速やかに前項記載の各保険会社に対し、保険金受取人の変更を通知するとともに、所定の手続をとるものとする。
死亡保険金の受取人(例:妻)が先に亡くなっていたときに、受取人を別の人(例:二女)に変える文例です。受取人が先に亡くなると、その人の相続人全員が受取人になり、均等に受け取るとした裁判例があります。
本来は契約者本人が保険会社で受取人を変更しますが、認知症などで手続ができなくなると困ります。遺言でも受取人の変更はできます。ただし、2010年4月1日より前に結んだ保険は会社によって対応が違うため、約款等で確認してください。
遺言書の文例:その他一切の財産を相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(中略)
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記預貯金を、長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(中略)
第○条 遺言者は、前各条に記載する財産を除く遺言者の有する手元現金、動産その他一切の財産を、前記長女坂戸竹子に相続させる。
不動産や預貯金などの承継者を個別に指定した後、末尾に置く「受け皿」の文例です。「前各条に記載する財産を除く遺言者の有する手元現金、動産その他一切の財産を、○○に相続させる」と書きます。
現金や家財道具などの細かい財産や、遺言書を作った後に取得した財産を、すべてを遺言書に書くことは困難です。書いていない財産は相続人全員の遺産分割協議が必要になるため、この条項で防ぎます。ただし、不動産の書き漏らしもこの条項に入ってしまう点に注意してください。
遺言書の文例:祭祀主宰者を指定する
第○条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、前記長男川越一郎を指定する。ただし、遺言者の死亡以前に前記長男川越一郎が死亡していた場合は、遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、前記孫川越夏郎を指定する。
お墓や仏壇を継ぐ人(祭祀主宰者)を、遺言書で決める文例です。遺言書や生前の指定がなければ、その地方の慣習で決まり、それでも決まらなければ家庭裁判所が決めます。
指定された人は辞退できませんが、法要を行う義務まではありません。ただ、法要を続けるには費用がかかるため、その人に預貯金を多めに渡すなどの配慮が必要かもしれません。
司法書士柴崎智哉
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遺言書の文例:遺言執行者を指定する(基本の形)
1.遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
2.遺言者の死亡以前に前記妻川越松子が死亡していた場合は、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
3.遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記妻川越松子を指定する。ただし、前記妻川越松子が死亡した場合、または前記妻川越松子が遺言執行者に就職しなかった場合は、遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長女坂戸竹子を指定する。
全財産を妻に渡す遺言に、遺言執行者の指定を加えた基本の文例です。不動産は、相続人に相続させる遺言なら、遺言執行者がいなくても相続人が登記できます。預貯金も相続人が単独で手続できるのが原則ですが、金融機関によっては、相続人全員の実印と印鑑証明書を求めるところが稀にあります。遺言執行者を指定しておけば、その心配がなくなります。
遺言執行者には、財産を受け取る相続人自身や家族を指定できます。未成年者と破産者は遺言執行者になれません。
遺言書の文例:遺言執行者を指定し、権限を与える
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長男川越一郎を指定する。ただし、前記長男川越一郎が死亡した場合または前記長男川越一郎が遺言執行者に就職しなかった場合は、遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記孫川越夏郎を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
3 遺言執行者は、この遺言の執行に関し、第三者にその任務を行わせることができる。
遺言執行者を指定し、権限まで書く文例です。第1項で指定し、第2項で「預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し」などの権限を与え、第3項で第三者に任務を行わせてよいと定めます。
預貯金を「相続させる」旨の遺言の場合、遺言執行者が払戻しの請求と解約の申入れをすることは、民法に定められています(解約は、その口座の預貯金の全部を相続させる場合に限ります)。ただし、遺贈の場合や、預貯金以外の金融資産、預貯金の名義変更などについては民法に規定がありません。これらの場合も遺言執行者に手続をさせたいときは、遺言執行者の権限として遺言書に明記しておきます。
遺言書の文例:遺言執行者を2人指定し、各々単独で執行できるようにする
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記金融機関に存在する預貯金を遺言者の長男志木鉄夫(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(中略)
第2条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(中略)
第3条 遺言者は、遺言者の有する下記金融機関に存在する預貯金を遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(中略)
第4条 遺言者は、前各条に記載する財産を除く遺言者の有する手元現金、動産その他一切の財産を前記妻川越松子に相続させる。
第5条 遺言者は、第1条に記載する遺言の遺言執行者として前記長男志木鉄夫を指定する。
2 遺言者は、前項で指定した遺言執行者に対し、次の権限を授与し、同遺言執行者は第1条に記載する遺言の執行を単独で行うことができる。
(1)第1条に記載する預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他第1条に記載する遺言の執行に必要な一切の行為をすること
第6条 遺言者は、第2条から第4条までに記載する遺言の遺言執行者として前記長女坂戸竹子を指定する。
2 遺言者は、前項で指定した遺言執行者に対し、次の権限を授与し、同遺言執行者は第2条から第4条までに記載する遺言の執行を単独で行うことができる。
(1)第2条から第4条までに記載する預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他第2条から第4条までに記載する遺言の執行に必要な一切の行為をすること
遺言執行者を2人指定し、それぞれが自分の担当範囲を単独で執行できるようにする文例です。たとえば、前婚のときの子に渡す財産と、後婚の妻や子に渡す財産とで、別々の遺言執行者を指定します。
遺言執行者が複数いると、原則として過半数で決めるため、連絡がつかないと手続が止まるおそれがあります。そこで、各自が執行する範囲(第○条から第○条まで)を書き、「単独で行うことができる」と明記します。
遺言書の文例:「遺贈する」を「相続させる」に読み替える規定
1.遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の甥川越一郎(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に包括して遺贈する。
2.遺言者の相続開始時に、前記川越一郎が遺言者の法定相続人の地位にある場合には、上記1のうち「包括して遺贈する」とあるのは、「相続させる」と読み替えるものとする。
3.遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記川越一郎を指定する。
「遺贈する」と書いた相手が、遺言者が亡くなったときには相続人になっていることがあります。たとえば、世話をしてくれた甥に遺贈する遺言を書いた後、甥の親(遺言者の弟)が先に亡くなると、甥は代襲相続人になります。
相続人には「相続させる」と書くのが通常です。そこで「相続開始時に法定相続人の地位にある場合は、『包括して遺贈する』を『相続させる』と読み替える」という規定を添えます。
遺言書の文例:予備の遺言執行者を指定する(1条4項)
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記妻川越松子を指定する。
2 前記妻川越松子が次の各号のいずれかに該当した場合は、遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長女坂戸竹子を指定する。
(1)死亡した場合
(2)遺言執行者に就職しなかった場合
(3)遺言執行者を辞任した場合
(4)遺言執行者を解任された場合
(5)遺言執行者の欠格事由に該当した場合
3 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
4 遺言執行者は、この遺言の執行に関し、第三者にその任務を行わせることができる。
遺言執行者を指定したうえで、その人が引き受けられないときに備えて次の人も指定する文例です。1つの条に4項を置きます。第1項で1人目を指定し、第2項で「死亡」「就職しなかった」「辞任」「解任」「欠格」のいずれかに当たれば2人目を指定すると定めます。第3項で権限、第4項で第三者に任せてよいことを書きます。
予備を書かなくても家庭裁判所に選任を申し立てられますが、時間と手間がかかります。
相手が亡くなっていた場合に備える文例(予備的遺言)
遺言書の文例:予備的遺言(妻、長女、孫の順に備える)
1.遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
2.遺言者の死亡以前に前記妻川越松子が死亡していた場合は、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
3.遺言者の死亡以前に前記妻川越松子及び前記長女坂戸竹子の両名が死亡していた場合は、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の孫坂戸七雄(平成○年○月○日生)に相続させる。
財産を渡す相手(例:妻)が先に亡くなっていたときの備えを、順にまとめた文例です。「相続させる」と書いた相手が遺言者の死亡以前に亡くなると、その部分の効力はなくなります。そこで、妻が亡くなっていれば長女、長女も亡くなっていれば孫、と予備を指定し、遺言執行者も同じ順で指定します。
遺言書の文例:予備的遺言①(長男が先に亡くなっていたら孫に)
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(中略)
第○条 遺言者の死亡以前に前記長男川越一郎が死亡していた場合は、遺言者は、第○条で前記長男川越一郎に相続させるとした財産を、遺言者の孫(前記長男川越一郎の長男)川越夏郎(平成○年○月○日生)に相続させる。
長男に不動産を渡す条の次に、「遺言者の死亡以前に長男が死亡していた場合は、孫(長男の長男)に相続させる」と書く文例です。
長男が先に亡くなっても、長男に渡すとした条項を長男の子が自動で引き継ぐわけではありません。その条項は効力を生じず、遺産分割協議に戻ります。孫に渡したいなら、この予備の条を書いておきます。同時に亡くなった場合も、この条が働きます。
遺言書の文例:予備的遺言②(孫も先に亡くなっていた場合まで)
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(中略)
第○条 遺言者の死亡以前に前記長男川越一郎が死亡していた場合は、遺言者は、第○条で前記長男川越一郎に相続させるとした財産を、前記孫川越夏郎に相続させる。ただし、遺言者の死亡以前に前記長男川越一郎及び前記孫川越夏郎の両名が死亡していた場合は、遺言者は、第○条で前記長男川越一郎に相続させるとした財産を、遺言者の孫(前記長男川越一郎の長女)川越秋子(平成○年○月○日生)に相続させる。
予備で指定した孫(夏郎)も、遺言者より先に亡くなっていた場合まで備える文例です。ただし書きで「長男及び孫の夏郎の両名が死亡していた場合は、孫の秋子に相続させる」と書きます。
孫の1人に予備を書いただけでは、その孫も先に亡くなると同じ問題が起きます。ただ、予備を増やすほど遺言書は複雑になります。どこまで備えるかは、家族の年齢や事情で決めてください。
遺言書の文例:受遺者が先に亡くなった場合に備える予備的遺贈
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記預貯金を高坂陸雄(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に遺贈する。
(中略)
第○条 遺言者の死亡以前に前記高坂陸雄が死亡していた場合は、遺言者は、第○条で前記高坂陸雄に遺贈するとした財産を、高坂海子(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に遺贈する。
遺贈を受ける人が、遺言者の死亡以前に亡くなった場合に備える文例です。遺贈は、受遺者が遺言者の死亡以前に亡くなると、その部分の効力が生じません。そのままだと、その財産は相続人の遺産分割に回ります。
「前記○○が死亡していた場合は、第○条で○○に遺贈するとした財産を、△△に遺贈する」と書き、次にもらう人を決めておきます。相続人でない人には「遺贈する」と書き、氏名・生年月日・住所で特定します。
遺言書の文例:遺贈の放棄にも備える予備的遺贈
第○条 遺言者の死亡以前に前記高坂陸雄が死亡していた場合、または前記高坂陸雄が第○条に記載する遺贈を放棄した場合は、遺言者は、第○条で前記高坂陸雄に遺贈するとした財産を、高坂海子(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に遺贈する。
遺贈を受ける人が先に亡くなった場合に加え、遺贈を断った(放棄した)場合にも備える文例です。「前記○○が死亡していた場合、又は○○が第○条に記載する遺贈を放棄した場合は、その財産を△△に遺贈する」と書きます。
もらう人は遺贈を放棄できるため、先に亡くなった場合だけでは備えが足りないことがあります。次にもらう人も、氏名・生年月日・住所で特定します。
遺言書の文例:相続放棄にも備える予備的遺言
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
(中略)
第○条 遺言者の死亡以前に前記長男川越一郎が死亡していた場合、または前記長男川越一郎が遺言者の相続について相続放棄をした場合は、遺言者は、第○条で前記長男川越一郎に相続させるとした財産を、遺言者の孫(前記長男川越一郎の長男)川越夏郎(平成○年○月○日生)に相続させる。
渡す相手が先に亡くなった場合に加え、相続を放棄した場合にも備える予備の文例です。「前記長男が死亡していた場合、又は相続放棄をした場合は、その財産を孫に相続させる」と書きます。
「相続させる」と書いた相手が相続放棄をすると、その部分は効力を生じず、残った相続人の遺産分割に回ります。この文例は、放棄した場合の行き先まで決めておくものです。
遺言書の文例:予備的遺言(2段の入れ子型)
第○条 遺言者の死亡以前に前記妻川越松子が死亡していた場合は、遺言者は、第○条で前記妻川越松子に相続させるとした財産を、前記長男川越一郎及び前記長女坂戸竹子に、各2分の1の割合で相続させる。
2 第1項の場合において、前記長男川越一郎も遺言者の死亡以前に死亡していたときは、第1項で前記長男川越一郎に相続させるとした部分を、遺言者の孫(前記長男川越一郎の長男)川越夏郎(平成○年○月○日生)に相続させる。
3 第1項の場合において、前記長女坂戸竹子も遺言者の死亡以前に死亡していたときは、第1項で前記長女坂戸竹子に相続させるとした部分を、高坂陸雄(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に遺贈する。
予備を2段にする文例です。第1項で、妻が遺言者の死亡以前に亡くなっていたら子2人に2分の1ずつ渡すと定めます。第2項・第3項で、その子も亡くなっていたら、その分を孫などに渡すと定めます。
司法書士柴崎智哉
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遺言書作成サポートの内容と費用を見る家族の状況別の文例(子のいない夫婦・前婚の子・内縁・相続人以外・特別受益)
遺言書の文例:妻が亡くなっていた場合は兄弟姉妹に相続させる(夫の遺言)
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
第2条 遺言者の死亡以前に前記妻川越松子が死亡していた場合は、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の姉坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
第3条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記妻川越松子を指定する。ただし、前記妻川越松子が死亡した場合または前記妻川越松子が遺言執行者に就職しなかった場合は、遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記姉坂戸竹子を指定する。
子のいない夫が、「妻が遺言者の死亡以前に亡くなっていたら、自分の兄弟姉妹に渡す」と備える文例です。妻が先に亡くなると、夫の相続人は親などの直系尊属、直系尊属が全員亡くなっていれば兄弟姉妹になります。何も書かないと、その全員の遺産分割協議が必要です。
遺言書の作成時に夫の親などの直系尊属が全員亡くなっているなら夫の兄弟姉妹は相続人なので「相続させる」と書き、誰に渡すかも決めておきます。兄弟姉妹には遺留分がないので、書いたとおりになります。
遺言書の文例:夫が亡くなっていた場合は夫の兄弟姉妹に遺贈する(妻の遺言)
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の夫川越一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
第2条 遺言者の死亡以前に前記夫川越一郎が死亡していた場合は、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、前記夫川越一郎の姉坂戸竹子(昭和○年○月○日生、住所 埼玉県東松山市○○)に包括して遺贈する。
第3条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として前記夫川越一郎を指定する。ただし、前記夫川越一郎が死亡した場合または前記夫川越一郎が遺言執行者に就職しなかった場合は、遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記坂戸竹子を指定する。
令和○年○月○日
埼玉県東松山市○○町○丁目○番地○ 遺言者 川越松子 ㊞
子のいない妻が、「夫が遺言者の死亡以前に亡くなっていたら、夫の姉(兄弟姉妹)に全財産を遺贈する」と備える文例です。夫の遺産を相続した後に妻が亡くなると、何も書かなければ、夫の先祖代々の土地も妻側の親族に移ります。
夫の姉は妻から見て相続人ではないので「遺贈する」と書き、氏名・生年月日・住所で特定します。遺言執行者がいないと遺贈は遺言者の相続人全員の協力が要るため、遺言執行者も、夫、夫の姉の順に指定しておきます。
遺言書の文例:前婚のときの子以外の相続人に相続させる
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の妻川越松子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(中略)
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記金融機関に存在する預貯金を遺言者の長女坂戸竹子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(中略)
第○条 遺言者は、前各条に記載する財産を除く遺言者の有する手元現金、動産その他一切の財産を前記妻川越松子に相続させる。
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長女坂戸竹子を指定する。
2 遺言者は、前項で指定した遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他遺言の執行に必要な一切の行為をすること
前妻(前夫)との間の子がいる人が、今の妻や子に財産を渡す文例です。前婚の子も相続人なので、遺言書がないと、その子の実印と印鑑証明書がもらえない限り相続手続が進みません。遺言書があれば、その必要はなくなります。
ただし、前婚の子には遺留分があり、それを満たさない遺言だった場合は、お金を請求される可能性があります。遺言執行者になった人は、前婚の子にも遺言の内容を通知する義務があります。
遺言書の文例:内縁の配偶者に全財産を包括遺贈する
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、内縁の妻川越梅子(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に包括して遺贈する。
第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記川越梅子を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
(1)預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
(2)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
婚姻届を出していない内縁の妻(夫)には相続権がないため、遺言書で全財産を渡す文例です。相続人ではないので「遺贈する」と書き、全部を渡すなら「包括して遺贈する」とします。氏名・生年月日・住所は住民票のとおりに書きます。
遺言執行者がいない場合、遺贈の手続に相続人全員の協力が要るため、内縁の妻(夫)自身を遺言執行者に指定しておきます。どちらが先に亡くなるか分からないので、2人とも遺言書を作っておいた方がよいでしょう。
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遺言書作成サポートの内容と費用を見る遺言書の文例:相続人以外(お世話になった人・子の嫁や婿・配偶者の連れ子)に全財産を包括遺贈する
1.遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、高坂陸雄(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に包括して遺贈する。
2.遺言者の死亡以前に前記高坂陸雄が死亡していた場合は、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、高坂海子(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に包括して遺贈する。
3.遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記高坂陸雄を指定する。
4.前記高坂陸雄が死亡した場合または前記高坂陸雄が遺言執行者に就職しなかった場合は、遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記高坂海子を指定する。
相続人ではない人(親しい友人など)に、全財産を渡す文例です。相続人でない人には「遺贈する」と書き、全部を渡すなら「包括して遺贈する」と明記します。包括遺贈では、借金などのマイナスの財産も、もらった割合で引き継ぎます。
氏名・生年月日・住所は住民票のとおりに書かないと、手続で支障が出る可能性があります。遺言執行者がいない場合、遺贈の手続に相続人全員の協力が要るため、遺言執行者(もらう人本人でも可)を指定しておきます。
遺言書の文例:1人の受遺者に割合で包括遺贈する
第○条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産のうち3分の1を、高坂春子(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○)に包括して遺贈する。
相続人ではない人に、全財産の一定割合(例:3分の1)を渡す文例です。「一切の財産のうち3分の1を包括して遺贈する」と書き、残りは相続人が相続します。
割合しか決めないので、どの財産を誰が取得するかは、もらう人と相続人が遺産分割協議で決めます。話し合いがまとまりそうにないなら、財産を特定した遺贈(この不動産、この預金など)にしておくほうが安全です。
遺言書の文例:全財産を複数人に包括遺贈する
第○条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、下記受遺者らに、それぞれに記載する割合で包括して遺贈する。
記
(1)高坂春子(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○) 10分の7
(2)高坂陸雄(昭和○年○月○日生、住所:埼玉県東松山市○○○○) 10分の3
全財産を、相続人ではない複数の人に割合で渡す文例です(例:10分の7と10分の3)。「受遺者らに、それぞれに記載する割合で包括して遺贈する」と書き、記の下に氏名・生年月日・住所と割合を並べます。
割合だけでは個々の財産が決まらず、受遺者全員で遺産分割協議が必要になります。まとまらなさそうなら、財産を特定した遺贈にしておいた方がよいでしょう。
遺言書の文例:預金を換価して団体に寄付する(遺贈寄付)
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記預金を、遺言執行者において換価処分させ、その換価金を、公益財団法人○○○○(主たる事務所:東京都○○区○○町○丁目○番○号)に遺贈する。
記
(1)うさぎ銀行 ○○支店 定期預金 口座番号XXXXXXX
(2)ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号XXXXX-XXXXXXXX
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記長男川越一郎を指定する。
財産の一部を、支援団体や学校などに寄付する文例です(遺贈寄付)。相続人ではないので「遺贈する」と書き、団体は正式名称と主たる事務所の所在地で特定します。略称や通称では手続ができないことがあるため、団体の遺贈寄付の窓口に正式名称を確認してください。
多くの団体は、金銭の特定遺贈を基本とし、不動産や株式はお金に換えて寄付するよう求めています。この文例は、預金を遺言執行者が払い戻し、そのお金を遺贈する形です。遺贈の手続と団体への連絡は遺言執行者が行うので、必ず指定します。相続人がいる場合は、遺留分を侵害しない範囲で金額を決めると争いを避けられます。
遺言書の文例:相続分を指定する
第○条 遺言者は、次のとおり相続分を指定する。
長女 坂戸竹子(昭和○年○月○日生) 10分の6
長男 川越一郎(昭和○年○月○日生) 10分の2
二女 熊谷梅子(昭和○年○月○日生) 10分の2
親の世話をしてくれた子の相続分を、遺言書で多くする文例です(例:長女6割、長男と二女2割ずつ)。何もしないと法定相続分は等分で、世話の苦労を他の相続人が考えてくれる保証はありません。
相続人全員の相続分を書いてください。一部だけだと、残りは法定相続分で決まり、配偶者がいるときは解釈が分かれます。また、決まるのは割合だけで、どの財産を取るかは遺産分割協議が必要です。それが難しそうなら、財産ごとに渡す人を決めておいた方がよいでしょう。
遺言書の文例:相続分の指定を第三者に委託する
第○条 遺言者は、相続人全員につき、その相続分の指定をすることを、次の者に委託する。
住所 埼玉県東松山市○○○○
氏名 高坂陸雄
生年月日 昭和○年○月○日生
相続分の決め方を、遺言者ではなく信頼できる第三者に任せる文例です。「相続人全員につき、その相続分の指定を、次の者に委託する」と書き、委託する人を住所・氏名・生年月日で特定します。相続人や包括遺贈を受ける人は委託先にできないとするのが通説です。
自分では決めにくいときの方法ですが、委託先が割合を決めた後も、どの財産を誰が取るかは遺産分割協議が必要です。
遺言書の文例:特別受益の持戻し免除の意思表示をする
第○条 遺言者は、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に対し、令和○年○月○日、住宅購入資金として金1000万円を贈与したが、特別受益としての持戻しを免除し、同贈与の価額を相続財産に加えず、前記長男川越一郎の相続分から控除しないものとする。
特定の生前贈与(例:長男に渡した住宅購入資金1,000万円)について、持戻しの免除を書く文例です。住宅資金や営業資金の贈与は特別受益になり、何も書かなければ、その分が長男の相続分から差し引かれます。
遺言書に免除の意思を書いておくと、その贈与を考えずに遺産を分けることになります。
遺言書の文例:一律に持戻しを免除する
第○条 遺言者が相続人らにした生前贈与が特別受益に該当する場合でも、特別受益としての持戻しを免除し、その贈与の価額を相続財産に加えないものとする。
特定の贈与ではなく、生前に渡した財産の全部について、持戻しを免除する文例です。贈与がいくつもあり、一つひとつ挙げたくないときに使います。
遺言書の文例:特別受益に該当する贈与があったことを付言事項に明示する
(付言事項)
遺言者は、遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)に対し、令和○年○月○日、住宅購入資金として金1000万円を贈与した。この特別受益を考慮して、本遺言では、前記長男川越一郎に何も相続させないこととした。
相続人の1人に特別受益に当たる生前贈与(例:長男に住宅購入資金1,000万円)をしていたため、遺言書ではその相続人に財産を相続させなかった場合に、贈与の内容を付言事項として書き残す文例です。
財産をもらえなかった相続人が「自分は生前贈与を受けていない」として、遺留分侵害額の請求をしてくる可能性があります。付言事項に拘束力はありませんが、贈与の日付・金額・受贈者・贈与した理由を遺言書に残しておけば、相続人の間で争いになったときに、贈与の内容や価額の手がかりになります。
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よくある質問
Q:文例をコピーして、そのまま使えますか?
A:名前・生年月日・財産の表示をご自身のものに直してお使いください。ただし、ご事情によっては文例どおりでは手続が進まないこともあり、使えることを保証するものではありません。手書きの遺言書(自筆証書遺言)は本文・日付・氏名を全部手書きする必要があり、パソコンで印刷してよいのは財産目録(別紙)だけです。遺言書作成サポートも承っております。
Q:「川越一郎」などの名前は、どう直せばよいですか?
A:相続人に渡すときは「遺言者の長男川越一郎(昭和○年○月○日生)」のように、続柄・氏名・生年月日で特定します。相続人以外の人に渡すときは、氏名・生年月日に加えて住所も書きます。
Q:自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらの文例ですか?
A:本文の書き方はどちらにも使えます。財産の数が多い場合や、予備的遺言・清算型のように条文が長くなる場合は、公正証書遺言のほうが確実です。
Q:ハンコ(押印)は必要ですか?
A:はい、必要です。2026年に公布された法改正で自筆証書遺言の押印は不要になる予定ですが、まだ施行されていません(施行日は政令で定められます)。今作る遺言書には、本文にも財産目録の各ページにも押印してください。
Q:不動産の書き方は、どこを見て写せばよいですか?
A:法務局で取る登記事項証明書(登記簿謄本)のとおりに写してください。住民票の住所(住居表示)や固定資産税の納税通知書の表記は、登記簿の表記と違うことがあり、相続登記ができない原因になります。
Q:遺言執行者は家族でもよいですか?
A:はい。相続人や財産を受け取る人自身を遺言執行者に指定できます。未成年者と破産者はなれません。預貯金の手続は、遺言執行者がいると金融機関での手続が進めやすくなります。
Q:文例にない事情があるときは?
A:遺言書作成サポート(公正証書遺言、または自筆証書遺言+法務局保管。88,000円(税込)〜)をご依頼いただくと、ご事情に合わせた文案を司法書士が作成します。ご自身で作りたい方は、著書『家族が困らない遺言書の書き方』(文例89本と遺言書設計シートを収録)で体系的に学べます。なお、お電話やメールでの書き方のご質問にはお答えしていません。
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※文例の書き方だけのご質問には、お電話・メールではお答えしていません。ご自身で作りたい方は「家族が困らない遺言書の書き方」をご覧ください。