信託する不動産について
信託する不動産を検討しましょう。
複数の不動産を持っている場合、全部を信託することもできますし、一部の不動産だけを信託することも可能です。
例えば、自宅不動産と賃貸物件を持っている場合、賃貸物件のみを信託するということでも構いません。
なお、賃貸物件を信託する場合、「損益通算の禁止規定」があるので注意しましょう。
受益者が個人である場合、信託財産から生じる不動産所得の損失(赤字)はなかったものとみなされます。
したがって、この損失(赤字)を、信託していない不動産に係る不動産所得の黒字や他の所得から差し引くことができません。
また、信託した不動産から生じた損失(赤字)を翌年に繰り越すこともできません。
そのため、信託した不動産に赤字の年がある場合、信託していなかったときよりも税金を多く払うことがある可能性があります。
その他、信託する不動産に漏れがないかどうかにも注意しましょう。
例えば、土地と建物を信託する場合、土地が数筆に分かれているケースもあります。
敷地と私道で分かれていることもあります。このとき私道を漏らして信託してしまうと、後で不動産の売却ができなくなってしまうかもしれません。
信託するお金について
信託するお金については委託者の全財産である必要はありません。
例えば、2000万円もっているうちの1500万円を信託して、手元に500万円残しておくということも可能です。
委託者の判断能力があるうちであれば、信託を組んだ後に追加でお金を信託することもできます(信託契約書を作り直す必要はありません)。
不動産を信託すると固定資産税の請求は受託者に行くようになります。
自宅不動産を信託する場合、売却するまでは不動産からの収益はない訳ですから、固定資産税やその他の維持費(庭木の剪定、草刈り、修繕などの費用)をまかなえるお金も信託しておきましょう。
賃貸物件を信託する場合は、敷金の返還義務は受託者が引き継ぎますから、その分のお金を信託しておくかなども検討しましょう。
今後、修繕を予定している場合は、その費用も信託する必要があるかどうかも検討します。
その他、受益者となる親御さんなどの生活費・医療費・介護費などにいくら必要となるかも踏まえて信託するお金を決めましょう。
受託者の権限を考える
信託する財産が決まったら、その財産の管理処分について受託者にどの様な権限を与えるか検討しましょう。
不動産を売る権限
自宅不動産に誰も住まなくなったら売る予定の場合や、必要に応じて不動産を現金化するような可能性がある場合、不動産を売る権限を受託者に与えておきます。
不動産を貸す権限
賃貸物件を信託する場合、賃貸物件を建設したり購入したりする予定の場合などは不動産を貸す権限を受託者に与えておきましょう。
自宅不動産の場合も誰も住まなくなったら、第三者に貸す可能性があるか検討しましょう。
不動産を管理する権限
不動産の維持保全に必要なことや、修繕、改良などを受託者においてできるように権限を与えておきます。
不動産を買う権限、建設する権限
資産活用のために、受託者が不動産を建設・購入する予定の場合は、その様な権限を与えておきます。
受益者の居住用不動産として、老後の生活に適した物件に買い替えたり、建て替えたりする可能性があるなら、その様な権限も与えておきましょう。
建物を解体する権限
建物が老朽化したら解体したり、建て替えたりする可能性もあるので、必要に応じて建物を解体する権限を与えるか検討しましょう。
借入をして不動産に担保設定をする権限
受託者が金融機関から借入をして不動産に担保を設定するスキームを検討している場合は、その様な権限も与えておきます。
なお、借入をする場合は、将来の相続税申告の際に受託者の借入を債務控除できるのか否かという論点がありますので、あらかじめ税理士に相談しておきましょう。
お金に関する権限
信託されたお金については、受益者の請求や必要に応じて受益者に給付したり、受益者の医療費・施設費・介護費などの支払をするなどの権限を受託者に与えておくことが考えられます。
次の記事:受託者の責任と義務を知る
家族信託 導入の流れ
- 何のために家族信託をする?
- 役割を担う人を考える
- 相続発生時の承継者を検討する
- 信託する財産を検討する
- 受託者の責任と義務を知る
- 信託口口座を作成する金融機関を検討する
- 用意する書類は何か?
- 信託契約公正証書を作成する
- 組成後に受託者が行うこと
- 相続が起こったら
- 信託を終了・変更したいとき
- 不動産を売るとき
導入の流れを動画で解説
組成後に受託者が行うことを解説
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