役割を担う人を誰にする?

信託契約により家族信託を組む場合、少なくとも二人が必要となります。

財産を信託する人(委託者)と財産を信託される人(受託者)です。

委託者

委託者は元々財産を持っていて、その財産を信託する人です。

親子間で信託する場合は、親御さんが委託者になるケースが多いのではないでしょうか。

家族信託を導入する場合、委託者となる人が家族信託の仕組みや契約内容を理解する必要があります。

認知症等で既に判断能力が低下していて、家族信託の仕組み等を理解できなければ、家族信託の導入も断念せざるを得ません。

判断能力の有無は、組成に携わる専門家が面談を通じて判断したり、信託契約書を公正証書で作成する公証人が面談して判断します。状況に応じて医師の診断書を求めることもあります。

受託者

信託された財産の管理処分を行う人を受託者と言います。

委託者は、受託者に財産管理を任せることになりますから、委託者の信頼のおける人物を受託者にする必要があります。

「受託者が財産を使い込むかもしれない」という心配があるなら家族信託はしない方が良いでしょう。

認知症になった場合の財産管理であれば、成年後見制度を使えば家庭裁判所の監督が行われる訳ですから、受託者が信頼できないケースでは家族信託ではなく、成年後見制度を選択することも考えられます。


なお、受託者は人の財産を管理するという性質上、義務と責任が生じます。

これらについては、後の記事で説明したいと思いますが、この義務と責任を受託者になる人は理解しておかなければなりません。

その結果、親子などのように委託者と深い間柄の人でないと、なかなか受託者になろうとは思わないかもしれません。


その他、未成年者は受託者になれませんのでご注意ください。


受託者になる人を検討するうえで、予備的な受託者になる人も考える必要があります。

信託が継続している間に、受託者の方が先に亡くなったり、判断能力が低下して信託の事務を行えなくなる可能性もあるからです。

そのとき、予備的な受託者を信託契約書で指定しておけば、スムーズに受託者の変更を行えます。

また、信託口口座を作る際に、予備的な受託者も定めて欲しいと金融機関に言われる可能性もあります。

予備的な受託者になる候補者がいなければ止むを得ませんが、候補者がいる場合は予備的な受託者を信託契約書に記載しておきましょう。

受益者

受益者は信託された財産からの利益の給付を受ける人です。

受託者が信託財産を管理して、そこからの利益を生活費などとして渡したり、医療費・施設費の支払をしてもらったりする人です。

信託組成時に委託者と受益者を別人にしてしまうと贈与税が課税されてしまうので、通常は委託者と同じ人を受益者にします。

親御さんが委託者の場合は、受益者も親御さんという形にします。

オプション

以上のおとり家族信託は委託者(兼受益者)と受託者の二人がいれば組成することができます。

その他に、オプションとして当事者の希望によっては信託監督人や受益者代理人などをつけることもできます。

また、導入時にはこれらの役割をつけずに、後で選任できる設定にしておくことも可能です。

信託監督人

信託監督人は主に受託者の監督に関する権限を行使できる役割になります。

受託者のつけている帳簿を閲覧したり、受託者に報告を求めたりすることができます。

受託者が信託法などに違反して取り消すことができる行為をした場合に信託監督人が取り消すこともできます。

信託監督人になるのに資格等はいりませんので、ご家族の誰かを信託監督人にすることも可能です。

なお、未成年者は信託監督人になれませんし、信託監督人と受託者の兼任もできません。

受益者代理人

受益者代理人は受益者の有する一切の権利行使ができます。

信託監督人は基本的に受託者の監督に関する権限を有していますが、これに加えて受益者代理人には受益者に代わって意思表示をする権限もあるとお考えください。

信託の運用中に状況が変わって信託契約を変更したり、終了したりすることがありますが、この変更や終了を受益者と受託者の合意でできると定めておくことがあります。

ただ、この定め方だと受益者が認知症になって判断能力が無くなると、合意ができなくなり、その結果、信託の変更や終了ができないという事態が考えられます。

受益者代理人がいれば、受益者に代わって意思表示ができますから、受益者代理人と受託者の合意で信託の変更や終了が可能となります。

受益者の判断能力の低下で意思表示ができない事態に備えて、受益者代理人を選任するという対策が考えられます。


ただし、受益者代理人が選任されると、その受益者代理人に代理される受益者自身は一部の例外を除いて自分自身では受益者の権限を行使できなくなります(受益者代理人に言って権限行使してもらうということが考えられますが)。

そのため、受益者の判断能力があるうちは受益者代理人をつけないで、受益者代理人を指定できる人だけを決めておき、受益者の判断能力が低下したら、受益者代理人を選任するという方法もあります。


受益者代理人になるには特に資格等がいる訳ではありませんので、ご家族の一人を受益者代理人にすることは可能です。

なお、未成年者は受益者代理人になれません。また、受益者代理人と受託者の兼任もできません。


以上、信託監督人と受益者代理人を説明しましたが、これらはつけることもできますし、当事者が希望しなければつけなくても構いません。

次の記事:相続発生時の承継者を検討する

家族信託 導入の流れ

導入の流れ 解説PDFファイル

  1. 何のために家族信託をする?
  2. 役割を担う人を考える
  3. 相続発生時の承継者を検討する
  4. 信託する財産を検討する
  5. 受託者の責任と義務を知る
  6. 信託口口座を作成する金融機関を検討する
  7. 用意する書類は何か?
  8. 信託契約公正証書を作成する
  9. 組成後に受託者が行うこと
  10. 相続が起こったら
  11. 信託を終了・変更したいとき
  12. 不動産を売るとき



導入の流れを動画で解説

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組成後に受託者が行うことを解説

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