はじめに

認知症になって判断能力がなくなると不動産を売ることができなくなります。

介護費用などに充てるため不動産をどうしても売らなければならないような場合、事前準備をしていなければ、成年後見人をつけて成年後見人が不動産を売るということになります。

この記事では、判断能力がなくなった方に成年後見人をつけて不動産を売却するまでの流れを解説します。

動画解説

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不動産をお持ちの親御さんが認知症になると

不動産をお持ちの親御さんが認知症になった場合、親御さんの不動産を売って介護費用・施設費用などに充てることができるでしょうか。

不動産を売る際は、司法書士が売主さん本人の売る意思の確認をします。

認知症になって判断能力がなくなったとすれば、この売る意思の確認ができなくなります。

そうすると不動産の所有権移転登記をすることができないので、不動産の場合ができません。

不動産をどうしても売る必要がある場合は、親御さんに成年後見人をつけて、成年後見人が売る手続をするという話になります(なお、居住用不動産を売る場合は、成年後見人をつけたうえで家庭裁判所の許可がないと売れません)。

成年後見制度の種類

成年後見制度は大きく分けると、法定後見と任意後見の二つに分かれます。

任意後見というのは、判断能力が低下する前に任意後見契約を結んでいた場合の話なので、詳細の説明は割愛します。

任意後見契約を事前に結んでいなかった場合、法定後見を使うことになりますが、法定後見は判断能力低下の程度により、後見、保佐、補助の3類型に分類されます。

判断能力の低下が重度の場合は後見、中度の場合は保佐、軽度の場合は補助ということになります。

後見、保佐、補助のどの類型で家庭裁判所に申立をするかは、医師の診断書の内容によります。

成年後見の申立に使う医師の診断書の雛形は裁判所が用意しており、裁判所のサイトからダウンロードできます。

医師の診断書を取り、診断書の「判断能力についての意見」という欄のどこにチェックがされているか確認します。

「判断能力についての意見」欄には次のような項目が書かれています。

  • 契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができる。 
  • 支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することが難しい場合がある。
  • 支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。
  • 支援を受けても,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。

「契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができる。」にチェックがされていれば、判断能力があるので成年後見制度を利用する必要がないということになります。

「支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することが難しい場合がある。」にチェックがされていれば補助で申し立てを行います。

「支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。」にチェックがされていれば保佐で申し立てを行います。

「支援を受けても,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。」にチェックがされていれば、後見で申し立てを行います。

なお、上記の類型は、申立後に家庭裁判所の調査がなされる過程で変更される可能性もあります。


後見申立の流れ

医師の診断書を入手したら、他の申立に必要な書類を集めたり、申立書の作成をします。

申し立てに必要な書類の作成は、司法書士に依頼することも可能ですので必要に応じてご相談頂ければと思います。


書類がそろったら、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に後見等の申立を行います。

申し立てをすると、家庭裁判所の調査が始まります。

申立人、後見人等候補者と面談があったり、ケースによっては本人の面談も行われます。

また、医師の鑑定という、診断書よりさらに詳しい心身の状況の分析がなされることもあります。

鑑定が行われる場合、医師の鑑定の費用を納める必要がでてきます。


調査が完了すると、後見(保佐、補助)開始の審判がなされ、審判書が後見人等に郵送されます。

審判書を受け取ってから2週間経過すると、審判が確定となり、正式に後見人等として活動できることになります。


成年後見制度の注意点

後見人に誰がなるかですが、申立の際に、後見人等の候補者に親族を挙げることもできます。

ただ、最終的に後見人を誰にするのか決めるのは家庭裁判所になります。

他の家族が反対したり、財産が多かったり、後見人になった後に複雑な法律行為をすることが予想されるときなど、家庭裁判所は親族ではなく、司法書士や弁護士などの専門職を後見人に選んでしまうかもしれません。

専門職が後見人になると継続的に後見人報酬がかかることになります。

後見人は一度つくと、本人の判断能力が回復しない限り、亡くなるまでついたままとなります。

概ね1年に1回、家庭裁判所が公平な立場から後見人の報酬を決めて、本人の財産から支払われることになります。

不動産の売却

成年後見人が選任されたら、本人の不動産を売る必要がある場合、成年後見人が売却手続をすることになります。

ただ、居住用不動産の場合は、成年後見人をつけたうえで、さらに家庭裁判所の売却許可を取らないと売ることができません。

居住用不動産を売らないと、生活費・介護費・施設費などがまかなえないなどの合理的な理由がないと、家庭裁判所は売却の許可を出さないかもしれません。

したがって、不動産の売却が目的で後見を申し立てたとしても、必ずしも売却できる結果になるとは限らないことに注意しましょう。

また、居住用不動産以外の不動産の売却であれば、家庭裁判所の許可は不要ですが、大きな金額の契約や取引をする場合は、事前に家庭裁判所に打診をして家庭裁判所の意向を確認しておいた方が望ましいと考えます。

成年後見人の他の職務

後見人は申立のきっかけとなったことだけをすれば良いわけではありません。

家庭裁判所の監督下で、本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に代わって、必要な契約を結んだり、財産を適切に維持管理していくことが求められます。

通帳などを適切に管理したり、本人が相続人となるような相続が発生した場合は、遺産分割協議に参加したりします。

遺産分割協議に参加する場合は、原則的には法定相続分を満たす内容の遺産分割協議をすることが求められます。

また、財産管理の他、身上監護も成年後見人の職務です。

身上監護は身上保護とも呼ばれていますが、本人の生活・医療・介護などに関する契約や手続です。

主に福祉関係の契約や手続をイメージしてください。

なお、成年後見人は概ね1年に1回、家庭裁判所に報告書や財産目録を提出して、後見の事務について報告をし、家庭裁判所の監督を受けます。

裁判所への報告も後見人の重要は職務です。

まとめ

判断能力がなくなって不動産が売れなくなった場合、どうしても売る必要があるのであれば成年後見人をつけることになります。

ただし、居住用不動産を売るには家庭裁判所の売却許可が必要ですので、必ずしも売れるとは限らないことに注意しましょう。

なお、居住用以外の不動産を売る場合も、家庭裁判所の意向を確認した方が良いでしょう。

また、成年後見人に親族が選ばれるとは限りません。専門職後見人が選任されることもあります。

成年後見人は不動産の売却だけすれば良いのではなく、本人の財産管理、身上監護を継続的に行っていくことになります。


以上、認知症の親御さんの不動産を売却する方法について解説してきました。

司法書士柴崎事務所では、成年後見の相談、申立書の作成を受けたまわっております。

初回の面談相談は無料です。

お電話(0493-31-2010)またはフォームからご予約ください。

申立手続については、成年後見申立のページもご参照ください。

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