質問

遺言代用信託で承継者を変更できないようにすることはできますか?


回答

通常の遺言ですと、遺言を撤回したり、後の遺言や生前処分と前の遺言が抵触する場合は前の遺言の抵触する部分が無効となります。

(遺言の撤回)
第千二十二条  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条  前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2  前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第千二十四条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

遺言が自由に撤回できてしまうと、後継者が困る場合があります。

例えば、会社の経営者で考えてみましょう。

親御さんが経営する会社の株式を持っていて、後継者となる長男に相続させる旨の遺言書を作っていたとします。

長男は自分が後継者になるものと思って一生懸命に会社のために働いています。

ところが、親御さんが亡くなる直前に他の子どもにそそのかされて、遺言を撤回し、他の子どもに株式を相続させる旨の遺言書を作ってしまったら、長男は報われません。

通常の遺言ですと、遺言者が自由に撤回できるので、後継者に地位が不安定にさらされるという問題があります。

信託を使えば、後継者である長男の同意がなければ承継する者を変更できないようにすることも可能です。


信託法第90条を見てみましょう。

(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)
第九十条  次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる
一  委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
二  委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
2  前項第二号の受益者は、同号の委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

親御さんが委託者兼受益者であり、親御さんが死亡したら長男が受益者となる信託を組んでいたとします。

原則的に、委託者である親御さんは、信託法90条1項により自由に後継の受益者を変更することができます。

ただし、「信託行為に別段の定めがあるときは、その定め」に従うことになります。

信託契約書の条項に、「第〇条 本信託においては、信託法90条1項の定めにかかわらず、委託者は受託者の同意がない限り受益者の変更をすることができない。」と入れておけば、委託者単独では受益者の変更ができなくなります。

この様に受益者の変更に一定の制限をかけることによって、後継者の地位を安定させることが信託なら可能となります。


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